2012年12月24日月曜日

猪瀬直樹・新都知事のとある一面について ⑥

「猪瀬直樹・東京都知事候補の支援者たちが堂々と選挙違反!」より
A 作家・猪瀬直樹が交通事故鑑定人・林洋を週刊文春誌上で批判(1994.10)

B 林氏が猪瀬氏と出版社に厳重抗議

C 文藝春秋社編集部が林氏に話し合いを提案、林氏は懐柔されるつもりはない、とこれを拒否

D 林氏、『交通事故……』所収の全5事例全ての誤りを指摘した小冊子30冊を作って各方面に配布したが、ほぼ黙殺される

E 林氏の弾尽きたと判断したのか、猪瀬が第二弾の批判(1995.10)

F 林氏、雑誌「宝島30」にて詳細に、猪瀬本の過ちを指摘(1995.11)

G 林氏と猪瀬氏、雑誌「宝島30」誌上で討論したが、紛糾して終了(1996.1)

H 林氏、上記小冊子を元に下に掲載した本を上梓(1996.3)

G 林氏と猪瀬氏、雑誌「宝島30」誌上で討論したが、紛糾して終了(1996.1)
の続きです。

この時の討論の題材となったのが『交通事故鑑定人S氏の事件簿』の第三章第一話のタンクローリーの当て逃げ事故でしたので、この事故について簡単に説明します。第三話である小学校教頭の当て逃げ事故についても取り上げられていますが、冗長になるため、ここでは割愛します。ご興味のある方は、下記の本を購入ください。

事件の概要はこうです。
タンクローリーの運転手が交差点を左折しようとしていたとき、自転車に載っていた電力会社社員をひいてしまいました。この会社員は死亡、運転手が罪に問われますが、運転手の勤める運送会社が鈴鹿鑑定人に鑑定を依頼して「運転手には過失責任がない」ことを証明した、というものです。
この事件の目撃者である交番の巡査が、
「被害者は自分の立っていた交番から、横断歩道を自転車に乗って反対側へ渡ろうとしていたときに、タンクローリーがやってきた。被害者が右足で踏ん張ったために自転車がひっくりかえり、そこにタンクローリーがぶつかって被害者も跳ね飛ばされて亡くなった」
と証言しています。
運転手の言い分はこうです。
「横断者に気づかず、横断歩道を渡ったところでガチャガチャという音がしたので車を停めて確認したところ、右前後輪に自転車がからまっていた」
被害者はタンクローリーの右2、3メートル後方にうつ伏せに倒れて即死状態だったそうです。

さて、鈴鹿氏はどのように推理したのでしょうか。
タンクローリーのタイヤに踏まれて折れ曲がった自転車に、鈴鹿氏は注目します。
Aの右側支柱(下図の見えている側)には、タンクローリーのフロントバンパーの塗料痕がついていました。
もしも自転車が警察官の証言する通りに交番側からやってきたのならば、Aの部分の左側支柱に、タンクローリーのバンパーの塗料痕がついていなければならないのに、それがないのはおかしい。

そして、BとCの2ヶ所には裏側にタイヤで踏まれた痕があります。
このようなことが起こる理由は、タンクローリーのフロントバンパーによってまず自転車にぶつかり、Aの部分がひかれた後、さらにタンクローリーの左後輪で自転車のBとCの部分が押しつぶされた、ということです。

猪瀬氏はこう結論づけました。
自転車に刻印された二条のタイヤ痕は、タンクローリーが左折するときの内輪差によって生じたものだった。(中略)そして被害者の自転車に残された二条のタイヤ痕をあてはめれば、左折による巻き込み事故であることが証明できる。(中略)N弁護士に語らせよう。『被害者はまずタンクローリーのバンパーにぶつかり、それから車輪に巻き込まれました。歩道にあった工事のための高さ三メートルの鉄柵によって、U運転手には被害者が横断しはじめるところは見えませんでした。それでバンパーにぶつかってしまったのです』(中略)U運転手にとって、H被害者の自転車は死角に入っていて見えなかったということになった(『交通事故……』P126~128)
――鉄柵。
もしも、被害者がタンクローリーの左側から走ってきたのだとすると、タンクローリーの左側にあった鉄柵が、視界を妨げていたということが証明されます。運転手のせいではなく、工事のための三メートルの鉄柵が、運転手の視野を妨げていたのであり、運転手の責任ではなくなります。

結局、運転手は実刑を免れました。

ところが、討論以前に、猪瀬氏は交通事故における「テクニカルターム(専門用語)」が全然分かっていませんでした。
「内輪差による巻き込み事故」
とは、バンパーにぶつかり、前輪でひかれた後に、後輪でひかれること、ではありません。
大型トラックのように大きな自動車が、交差点を曲がる時には、前輪を避けても、後輪はそれよりももっと内側の軌道を描きます。

車体側面にぶつかった被害者が、自動車の床下に押し倒され、巻き込まれるようにして後輪にひかれることが「内輪差による巻き込み事故」といわれるものです。

よって、この事故は自転車が右側から走行したにせよ、左側から走行したにせよ、「全面押し倒し事故」(『偽りの……』P205)と呼ばれるものです。決して「内輪差による巻き込み事故」ではありません。それは、「宝島30」の編集者が警察庁広報課に確認して、厳然としたテクニカルタームであることが判明しています。

さらに、タンクローリー左方から自転車がやってきて、その荷台後輪(Aの部分)がぶつかったとしたら、自転車がタンクローリーの全面にすっぽりと入っていたというこであり、そこまで自転車が視界に入っていながら「横断者に気づかず」、ひいた後もわからない、ということは考えられません。

その上、自転車もはねられた人も、タンクローリーの右側に倒れているのです。それが何故なのか、猪瀬氏はまったく説明しておりませんし、鈴鹿氏もこれについて言及していないのです。

さらに、討論で明らかになったことは、自転車が引かれたのは、タンクローリーの右の車輪だったと鈴鹿氏が証言していたことです。それだと、内輪差などはなんの関係もありませんよね?


次回がラストです。いやぁ、長かった。

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