2012年12月18日火曜日

猪瀬直樹の人気は今がピーク

東京都知事選当選決定直後の、猪瀬直樹の会見の様子がネットにアップされていました。
都知事選史上最高得票数を得て当選したというのに、随分と浮かない顔でインタビューに答えていたのが印象的です。
当 4,338,936 猪瀬 直樹  無新
     968,960 宇都宮健児 無新
     621,278 松沢 成文  無新
     179,180 笹川  堯   諸新
     129,406 中松 義郎  無新
      81,885 吉田 重信  無新
      47,829 トクマ       諸新
      38,855 マック赤坂   諸新
      36,114 五十嵐政一 無新
               =確定得票=
選挙戦の疲労がピークに達しているからだ、というのが大方の感想でしょう。
しかし私には、猪瀬氏が自分の人気のピークが今であることを薄々感じていたからであるように思えて、なりませんでした。

今回の選挙には、石原都政の総括という意味合いが込められています。
史上最多得票は、石原都政への賛同・感謝と、他の候補者への不信感が重なったためでしょう。石原氏の影であった猪瀬氏自身の魅力ではない、というのが私の分析です。

そもそも猪瀬氏には、人を惹きつける魅力があるのでしょうか。
彼の言動を長年見てきましたが、目上の人間には大変丁寧な態度をとるのに、目下の人間、弱い立場の人間には、大変不遜な態度を取るのが彼の特徴です。
このような人間は本来、大衆の支持を得られるはずがありません。

それなのに、彼がここまでの地位を築きあげてきたのは、ノンフィクション作家としての業績、実力に加え、自分が表に立たずに上の立場の人間を補強する、脇役に徹してきたからです。
社会的立場の高い人々に可愛がられ、引き上げられて、今の地位を築きましたが、下の人間から支えられたからではありません。

まず、ノンフィクション作家としての実績について。
彼は明治大学の博士課程を終了後、36歳で『天皇の影法師』を出版して文壇デビューします。
その執筆スタイルは、丹念な取材と大量の資料をもとにして、私たちの先入観とは異なる歴史の「実像」を顕にするというものです。
その実力は、1987に『ミカドの肖像』で第18回第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した折り紙つきです。
たしかに、あれだけの資料を読み込む、彼の能力には並々ならぬものがあります。
主に土地と権力に焦点を絞った数々の著作をものにしており、行政に携わりながらも、今も執筆活動の手を緩めません。
スタミナがあり、暗記力と整理力に長けていて、なおかつどのような論理展開をすれば大衆に興味を持ってもらえるかを熟知している人物であるのは、間違いありません。

ところが彼は、有能な人間に時々いる、能力の劣った人間に批判されることに我慢できない手合いのようです。
放射能の心配をする主婦のTwitter上の発言に対して、
とツイートしたり、マンガの性表現規制を行おうとする姿勢が批判されたことに対して、
とツイートしたりしています。
彼にはこの手の蔑視発言が、とても多いという特徴があります。

放射能に恐怖を感じて発言した主婦は、確かに知識不足でしょうし、彼の主張を批判したアニメ好きの青年の多くが、社会的に評価の低い生活を送っているのも事実なのでしょう。
彼のことだから、猪瀬氏に批判的な発言を繰り返す彼らのプロフィールを読んだ上で、彼らが最も傷つきそうな言葉を投げかけたのではないかと思われます。

しかし、私は思うのです。
その発言の妥当性を批判するのではなく、批判者の背景である社会的地位、弱い立場を揶揄し、レッテル貼りを行なうのは、論理で勝てずに差別で相手を貶める、大変卑怯で汚い行為ではないかと。

そんな、社会的地位が弱い人間には強気な彼ですが、目上の立場の人間には一転、徹底してへりくだります。
テレビで石原慎太郎に接する態度を観た時に、あまりの腰巾着ぶりに驚きました。

ある種の人間には、それがたまらなく心地よいのでしょう。
社会的地位の高い人間にとって、普段から腰の低い人間に自分へ丁寧な態度をとられることよりも、普段傲慢で、かつ能力の高い人間に、自分の前で追従を繰り広げられることほど、自分の社会的地位を実感することはありません。
猪瀬氏はそこが分かっていたのでしょう。だから、目上の人間に可愛がられ、引き立てられ、その地位を上げていきました。

彼は、自分自身のポジションをよく知っています。
情報を数多く手に入れ、状況を判断し、人間関係を熟知した上で、そこに自分をどうはめこむかを考えていく……それが彼の遊泳策です。
だからこそ、今回の得票数が自分の人気のためではないことを一番知っているでしょうし、この得票数が与える影響に気を揉んでいるはずです。

今までは副都知事という立場でしたから、全ての批判は石原慎太郎に向けられていました。
※ちなみに、石原慎太郎の政治姿勢には厳しい視線が多く、私の身近にも、彼のことを嫌っている人が多いです。アンチも多かったことが、猪瀬氏を下回る得票数しか得られなかったのでしょう。しかし、それは石原氏の行政能力が猪瀬氏を下回ったことを意味しません。私は、石原氏の政治運営の手腕は大変高いと考えています。
彼が都政につく前の東京は、治安が悪化、『池袋ウエストゲートパーク』で描かれたように、チーマーやカラーギャングが跋扈して、悲惨な状況となっていました。しかし、彼を首班とする新宿浄化作戦のお陰で、東京の治安は劇的に改善されました。昔、ヤクザやチンピラが跋扈していた都下の実情は、今では記憶の外へ去りかけているようですが。
ところが、これからは、猪瀬氏が批判の矢面に立ちます。
これまで彼に興味を持っていなかった人々も、彼一人を見るようになるので、上記のような彼の性格に、おいおい気がついてくるでしょう。
そして、人気はどんどん落ちていきます。
人気が下がるに連れて、人々の心は離反していきます。
それを彼は、これから一人で耐えていかねばなりません。

その時、彼をかばってくれる目上の人間はいないでしょう。
なにしろ、老人の嫉妬は怖い。
石原慎太郎を上回る得票数を、彼が得てしまったという事実により、石原元都知事から嫉妬されることは間違いありませんからね。

それが、今回の史上最多得票を得たことの意味です。

さて、明日は猪瀬氏のノンフィクション作家としての能力に疑義を呈した『偽りのノンフィクション作家 猪瀬直樹の肖像』についての紹介記事を書きます。


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