2013年2月25日月曜日

アメリカで進む健康保険制度改革

アメリカが執拗に日本をTPPへ参加させようとする目的の一つに、日本の健康保険制度の破壊がある、という。

日本人が医療費に支出する金額は、今や大変な額に膨れ上がっている。国庫予算の歳出に占める社会保障関係費の割合は毎年トップであり、平成21年度の支出額は26兆3,901億円にもなる。
★ 国税庁ホームページより

アメリカの保険業者ここに食い込めれば、大儲けが出来る。日本にすでに進出を果たしたアメリカの保険会社のガン保険の販売は大変好調で、中でもアフラックは、会社全体の売上高のうち日本によるものが7割を占めるという。もしも日本の国民皆保険制度の一部を潰すことができれば、確実に自社の利益になる目算が立つのだから、アメリカの保険会社にとって、日本の福利厚生分野は宝の山に見えるのだろう。日本に圧力をかけないわけがない。

アメリカ合衆国の国是の1つになっているものが、「民間でできることは民間へ委ねる」という原則だ。税金を徴収して福利厚生費として再分配する方式では、公務員の恣意的な意思が働くために権力腐敗の温床となる。その点、民間では競争原理が働くために、神の見えざる手によって資金や労働力が公平に配分される、という考え方がもととなっている。

これを推進するのが市場原理主義者たちだ。今ではやや退潮傾向にある彼らの思想的影響力は、アメリカではまだまだ根強い。彼らからすれば、日本の保険制度なぞは歪な制度でしかない。

ところがアメリカの民間健康保険はうまく機能していないのが現実だ。貧乏人は民間の健康保険に加入することができないために、病気になっても医療費を支払えない。結果、不健康な生活を長年にわたって強いられるために、よく働けず、貧乏人の家庭はますます貧しくなるという悪循環が起こっている。

原理主義者の欠点は、現実の姿を認めず、原理原則を振り回して自分が正しいと主張するところ。努力では超えられない運命のイタズラで貧困にあえいで困っている人々がいても、
「努力をしていないから貧しいのだ。公的な健康保険制度は彼らの勤労意欲を蝕む」
と強弁して、そこで苦しんでる人を救ってはいけないと周囲の人々をたしなめる。

だが、井戸に腰掛けて落ちようとしている子供を見て、
「危ない!」
と思うのが人間ではないか? それを中国の哲学者である孟子は「惻隠(そくいん)の情」と呼び、人間を人間たらしめる本能の一つだと定義した。医療費を払えないばかりに目の前で苦しんでいる、貧しく罪のない子供たちを救おうとしないのは人間性の否定だ。自助努力を尊ぶあまりに、目前で苦しむ人々を救ってはならない、と考えることは間違っている。

ところがアメリカでも、さすがに現状を変えなければならないという認識が強くなってきた。オバマ大統領が熱心に健康保険制度改革に取り組んでいるのを、ご存じの方も多いだろう。このことについて、以下のニュースとそれにまつわる議論が盛り上がっていたので、ご紹介したい。


あなたの健康保険がもうすぐ保障してくれる10のこと
 もしもこれまで健康保険に入っていたならば、保険がいかに何も保障しないか、よくご存知のはずだ。保険金請求をしようとしても、出来ないものが無限にあるようにおもえるかもしれない。何が保障されているのかさえ、よく分からないだろう。

 しかし、今週(2/18の週)になってアメリカ人は、Affordable Care Act (ACA)によって2014年1月から新しく始まる健康保険制度が何を保障するのか、今までよりも明確に知ることができるようになった。米国保健社会福祉省(HHS)は、"最重要健康手当"と呼ばれるもののリストを公表した。

 この10の新しい取り組みは、個人及び零細企業主の健康保険に適用され、子供のいない家庭を含む低所得者を保障する国民医療保障制度においても同様の措置がとられる。同様に、健康保険を提供する一部の大手雇用者は、新しいリストからある程度の利点を得ることになるだろう。
(中略)
 簡単に述べるならば、今週の行政規則によって、新しい保険制度によって保障されることになった幅広い治療及び看護の分野には、以下のものとなる。

① 外来医療費
② 救急医療費
③ 入院費
④ 産科医療及び新生児看護費
⑤ 精神衛生及び依存症者対策費
⑥ 処方薬代
⑦ リハビリテーションサービスや器具にかかる費用
⑧ 臨床検査費
⑨ 病気の予防と健康促進ならびに慢性疾患管理費
⑩ 小児科にかかる費用(歯科及び眼科を含む)
(後略)
★ 10 Things Your Health Insurance Plan Will Soon Have to Cover


このニュースに関する反応は、以下のとおり。
"たくさんの人が権利という言葉を使っているようだが、一生の内に社会保障税を支払うために50年間も働くとしたら、それは権利ではない。社会保障税を払い始めるということは、利益をむさぼる信託基金へそのカネが向かうということだ。しかし、国会議員は我々のカネを自分の自由になるものだと考えていやがるし、数年間働いただけで一生安泰なんだからな"

"よりよい保障=高い負担"

"オバマがオバマケアを成立させられますように"

"タダ飯なんてないよ"

"これ、私の保険が今の通院を保障してもらえるということ? 1ヶ月に3万円以上間違いなくかかっているぞ!"

"これは「既存の保険制度のために支払わなければならない10のこと」と呼ぶべきだ"

"どうか火災保険にもこれと同じようなことをしてもらえますように。あいつらは家に起こりうるあらゆるものごとに入り込んできやがる"

"この題だと、保険が保障するべき10のことのように思えるね"

"新しい法律がなくても、私の州民保険料はどちらにせよ値上がりする。何年もの間、経費が上がり続けていたから"

"「今の健康保険制度をそのままにするつもりだ」バラク・オバマの2009年の発言"

"「授乳コンサルタント」なんかのためにお金を払わなくちゃいけないの? 赤ん坊にお乳を自然に与える方法を母親に教える人が必要なの? 私の友達が全部をやってみたけれど緊張してしまってストレスのためにお乳が出なくなったんだけど!"

"もしも1000万円あって保障がいらないのでないかぎり、私にとって何も負担にならないよ。どうして私たちがすべての人にこの保険制度が必要となったのか? どうして私たちは保険料を払わない人のための保険制度を持っていなかったのか? 痛みを分かち合うことで段々とわかってきた。富をわかちあおうよ"

"2014年1月って、もうすぐだよね?"


0 件のコメント:

コメントを投稿