2013年6月21日金曜日

「モズグス型」という類型――渡邉美樹、戸塚宏、永守重信などの共通点

先日会った友人はワタミの株を持っていて、「株主優待券を使って呑もう」と誘われたものの、あまり気乗りがせずに断った。ワタミは接客も食事もそれなりにいいのは確かなのだけれども、創業者がアレなので、ちょいとその気になれない。

友人は合理的に物事を考える人間。創業者の人間性と、会社の良さは別だと割りきる。彼のサバサバした性格は、いつも羨ましいと思う(私が考え過ぎなのかも)。

ところが、逆にこの手のブラック創業者の人間性に傾倒するのもいる。これは別の知人だが、某カルト宗教にはまっていたので、止めるために彼の家を訪れたところ、本棚にワタミの渡邉美樹の著書と、日本電産の永守重信の本が揃っていて頭痛がした。

あれは何なのだろうね? 知人の信じるカルト宗教の教えは、自己成長や努力、社会貢献を主張する一見まともなものだが、やることが軒並み胡散臭い。ちなみに知人は戸塚ヨットスクールの戸塚宏のことも尊敬していた。社会性を備えた宗教と、ブラックな組織には、共通する何かがあるのかもしれないと思った瞬間だった。

戸塚宏や渡邉美樹など――彼らは俗物的な独裁者とは異なり、どこか宗教的だ。狂信的独裁者といえばヒトラーだが、反ユダヤ主義のような明らかに差別的で異常な思想ではなく、それなりにまっとうな思想を掲げる。

まっとうな思想を信じているはずなのに、なぜか発言・他者への扱いが異常。かといってサイコパスのような「平然と嘘をつく」「良心の欠如」という特徴を有していない……こういう人物を類型化できないか、と考えた時に真っ先に思い浮かんだのが、『ベルセルク』というマンガに出てきた登場人物モズグス。
(C)三浦建太郎/白泉社
それ以来、彼らのようなタイプの人間を、密かに「モズグス型」と呼ぶようにしている。

まず『ベルセルク』とモズグスのことを簡単に説明しよう(どちらもWikipediaを参照)。
『ベルセルク』
 三浦建太郎による日本の漫画作品。白泉社発行の漫画誌『ヤングアニマル』にて不定期で連載されている。(中略)中世ヨーロッパを下地にした「剣と魔法の世界」を舞台に、身の丈を超える巨大な剣を携えた剣士ガッツの復讐の旅を描いたダーク・ファンタジー。

モズグス
 「血の経典」の異名を持ち、どんな軽微な罪さえも許さぬ苛烈な審問で恐れられる異端審問官。法王庁から派遣され、異端の徒や異教徒として裁いた者をことごとく磔刑や車輪轢きの刑といった極刑に処しており、その数は500人以上に上る。
それでは、このモズグス型に共通する特徴を述べてみたい。

1.強烈な使命感
彼らには「世の中を良くしなければならない」という強い使命感がある。

2.若年時に「原理」を獲得
彼らは若年時に、それぞれの体験と学習によって獲得した、ある信念、「世の中を良くするため」の方法論を持つ。その「原理」は、社会に貢献するものではあるものの、弱者・少数者などの犠牲を必ず生み出す、歪んだものであるのが特徴。単純であり、現実の複雑な社会に完全に応用できないものであることが多い。彼らは、現実にそって「原理」を修正するのではなく、「原理」に沿って社会を修正することを選ぶ。なお、「原理」はモズグス型人物の現実的な利益(社会的地位、財産など)を保証するものでもある。

3.参考とする形而上のバックボーンがある
モズグスはカトリックと思しき神の教えの狂信者であるが、たとえば渡邉美樹もキリスト教、戸塚宏は朱子学などを参考にする。その中から自分の成功体験をもとに、自分に都合のいい部分だけをつまみとって作り上げたのが「原理」である(渡邉美樹の「夢」や戸塚宏の「脳幹論」など)。

4.「原理」に忠実で迷わない
「迷う」のが人間だが、彼らは迷いを見せない。「原理」に間違いはないと固く信じている。

5.「原理」と異なる行為は間違い
他人が彼らの原理と異なる考えを持ち、異なる行動をするのは当然なのだが、彼らにとってはそれは即アウト。間違いなので是正しなければならず、糾弾しなければならない。多種多様な価値観とやらを認めない。価値観は己の信じる「原理」のみ。

6.根本に人権意識や遵法意識がない
個人の信条がいかに正しかろうと、それを超える人類普遍の価値観や法律が存在するはずだが、彼らにとって何より尊重すべきは自身の「原理」。基本的人権や法律がそれに反するならば、それを破るのは当然だと考えている。
逆に、社会的に蔑視されているような人物であっても、自身の「原理」に従うのならば、社会的偏見に拘泥せずに採用する。

7.自分を特別だと思っている
「原理」を尊び、そのために生きていると自負する自分のことを、選ばれた人物だと密かに自負している。だから、自分の肖像を飾ったり自己を神格化することを恥じない。

8.倫理観は強い
モズグス型ではない、傲慢な人間、強欲な人間は、特権を利用して部下に肉体関係を迫ったり蓄財に走ったりするものだが、モズグス型の人間は本能的欲望に基づいた罪は犯さない。このため、あまり醜聞とは縁がない。

9.肉体的、精神的暴力の肯定
ただ「相手のことを傷つけてはいけない」という倫理観を彼らは持たない。それどころか「原理」に従わない人間を、肉体的罰や精神的苦痛を与えて無理やり従わせることは正しいことだと考えている。

10.恥ずかしい過去がない
親から憎まれていた、引きこもりで登校拒否だった、風俗にはまっていた、イジメられていた、ギャンブル依存症だった、挫折した、などの他人にあまり知られたくない過去を誰しもいくつか持っているものだが、彼らにはそれがほとんどない。だから弱みがないため、他人に強い立場でモノを言う。

11.軽蔑をせず、罰を与える
恥ずかしい過去を持つ人間、罪を犯した人間、「原理」に反した人間のことを彼らは軽蔑をしたりバカにしたりすることは、意外にない。ただし、罰を与えなければならないと思っているし、それが背理者のためだと信じている。しかも、それに従わなければ激怒する。

12.普段は穏やかだが、逆らわれると激高する
元々は激情タイプだが、それを外に出すと世間では受け入れられないことをよく知っているから、とても穏やかな素振りを普段は見せている。彼らは微笑みを絶やさない。だが、自身の信じる「原理」を否定されたり、立場が下の人間から反抗されたりすると、途端に怒り狂い、罰を与えるまで収まらない。

13.人格者だと信じるエゴイスト
彼らは自分のことを人格者であると自負しているけれども、その本性はエゴイスト。だが、自分の利益となる「原理」こそが普遍的正義だと信じているため、それに従っている自分は人格者である、と考えている。また、「原理」に従って自己の利益(地位や名誉、財産)が増大することは当然のことだと考えている。

14.絶対服従の部下を従える
彼らは自分に絶対服従の部下を作る。部下は主の劣化版コピーともいうべき存在で、主の手足となって働く以外に行動原理を持たない。そういう部下をモズグス型は自身が若い内に最底辺から見出し、引き上げて、自分の手足としている。

15.体力のある努力家
工夫をこらして努力をするタイプではなく、恵まれた体力に任せて寝る間を惜しんで働くハードワーカータイプ。だから、睡眠を削り、長時間働くことは正しいことだと信じているし、他人にもそれを強制する。自分に厳しく他人にも厳しい。

以上となる。自覚なき原理主義者、微笑むエゴイスト、といったところだろうか。穏やかな風貌で社会的に相応の地位を占めているけれども、単純な原理を振りかざして他人に強制し、いくらでも他人に残忍になれる彼ら「モズグス型」には、できるだけ関わりあいになりたくないものだ。
ベルセルク (1) (Jets comics (431))
ベルセルク (1) (Jets comics (431))

17 件のコメント :

  1. 15に使われている画像、台詞が改変されているような

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    1. 本当ですね(汗
      ご指摘感謝です。
      帰宅してから画像貼り直すかして対応します。

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  2. モズグスの方も関わってほしくないと思っている
    例えばこのような形でも
    そんな特徴はないかな?

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    1. ブログに書かれたりしたくないということですか?
      あるかもしれませんね。自分をよく見せたがるから、崇拝以外の評価はいらなさそうです。

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  3. モズグズ何巻から登場するんでしたっけ。
    よく知らないけど参考に「ベルセルク」って漫画を読んでみようかな☆という人がいたら、ひどい目にあう予感がします。

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    1. 彼が出てくるのは18巻ですよね。
      『ベルセルク』は間違ったイメージで読み始めても、面白いから後悔しないと思うんです。グロは多いけれど。

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  4. 漫画の狂信者と現実の宗教を混同していませんか?
    日本のブラック企業の経営者を「どこか宗教的だ。」とおっしゃっていますが
    あなたの個人的な宗教体験を教えていただけますか?
    たぶん干からびた骨のような体験しかないんだと思いますが。

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    1. もっと質問を絞ってもらえますか。

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    2. 別に漫画の狂信者と現実の宗教を一致はさせてないだろ。
      言いたいのは自分の原理と同じ部分であるような宗教の一部だけ切り取って自己をさらに正当化させようと宗教利用しているということであって。

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    3. 代わりに返答いただき、ありがとうございます。

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  5. 個人的には彼らは一様に自己愛性に基づいた形容しがたいものを持っているように思います。成功しているという事実が、毒素を限りなく薄めている。ようは渇望が満たされているから攻撃的ではないだけ…。過労死問題関連では失言もしていましたよね。戸塚氏にしてもヨットスクールでのあれ界隈では結構攻撃的な本性をあらわとしていました。
    自己愛性人格障害の成功症例は非常に稀有ですが、軒並みカリスマであったことが知られているので、そのあたりからも考察してみると面白いかもしれません。
    アマカナタさんはあまり

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  6. 途中送信失礼。
    アマカナタさんがあまりご存じないようでしたら、市橋秀夫氏を中心に読んでみるとよろしいかと。

    失礼いたしました。

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    1. 戸塚氏はテレビで観ている限りでは、穏やかな人物です。
      普段の態度と羅刹のような怒りとの落差が、カリスマ性を作るのかもしれませんね。

      市橋秀夫氏の著書、アマゾンで調べたら面白そうです。今度本屋に行って探してみます。

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  7. はじめまして
    ピタゴラスやプラトンは使命感の強い形而上学者で倫理観も強く弱みもまったく無い善意の塊のような信奉者達から非常な尊敬を受けていた(今も受けている)人物なのに、能力が足りないという理由で追放した元仲間を死人扱いしてわざわざお墓を立てた上でシカトしたり、完全な管理社会を作って優生学的に劣等者(とプラトンが考える人達)の嬰児をことごとく処分しようとしたりで、まあ(善意しかないのだから)サイコパスとも言えないし、理性的で自己愛ともなんか違うし、けれどサイコパスや自己愛よりヤバイ気がするんだけど、これはなんと言ってよいやら…という感じだったのですが、この記事を読んで正しく目からウロコです。ほぼ当てはまります。
    ただ漫画のキャラクターの名を冠していてはあまり普遍的ではないような気もしますから、「支配的アスペ」とか「独裁型アスペ」とか…もっと一般的な感じの名称なら、とは思いました。まあこういう人達って、全体主義者なのは間違いないですよね。

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    1. どうもありがとうございます。能力主義の社会が許されるのは、優秀な人間が劣った人間を救うためであるはずなのですが、
      「劣った人間は処分してもいい」
      と主張するのは本末転倒だと私も思うのです。

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  8. 戸塚宏は高校時代までは読書好きで機械オタクの典型的ながり勉少年だったそうです。

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    1. 知りませんでした。弱者の気持ちが一番分かりそうなものですが、事実は違いますね。

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