2014年2月15日土曜日

師匠から学び、師匠を乗り越えるための方法

ノマドブームにあやかって、組織から離れて独立する人、増えていますね。組織に所属しないことをカッコイイ、と思う人も、相変わらず多いです。

このブームに警鐘を鳴らす、下記のような記事もあります。

これが一匹狼の実態である。
そして、狼同様に自然界での低カースト生物である人間の社会も、狼と相似した原理で運営されているに違いない。
孤立者は、劣っているから孤立しているのである。
身も蓋もない言葉ですが、これは真実。本当に強い人間とは、組織の中で出世レースに勝ち抜いた人物なのかもしれません。

ただ、安定した組織から離れてしまった人にとっては、それがカッコイイかどうかとか、劣っているかどうかなどはどうでもいい問題。生きていかなければなりません。生活していかなければなりません。家族を食わせていかねばなりません。

自分だけでうまくいく人はいない

しかし、そこで問題が生じます。独立心の強い人間は、まず、自分の力だけでやっていこうとします。でも、ほとんどうまくいきません。最初から自分の能力だけでうまくいく人間は、よほどの才能をもった人間だけです。

そこまでの才能のない人間で、それでも生き残っていきたい人間に残された方法が、他人の真似をする、という方法。そうです。師匠を見つけて、師匠に弟子入りするのです。

さて、本日の記事の主眼はここからです。

せっかくいい師匠についたにも関わらず、師匠の弟子のまま、一生を終える人がいます。逆に、師匠を超える成功をおさめる人もいます。

師匠から独立するのは、大変難しいのです。師匠と自分が選んだ人間だけあって、自分よりも能力が高く、自分よりも魅力があるのです。そして、自分の先を歩いていますから、老齢によって衰えるのを待つ以外に、師匠を追い抜くのは、通常困難です。

それに、師匠によっては、弟子が自立するのを嫌がる人もいます。支配欲が強かったり、あるいは自分のライバルが増えるのが嫌だったり、理由は様々ですが、この手の師匠に潰されている弟子も、よく見かけます。

では、ある程度師匠から学ぶべきものは学び、それから独立して、師匠を越えたいと願う人間は、どのような方法を取ればいいのでしょうか?

以前、『太平洋文明の興亡』という古い本を読んでいたところ、師匠を超えるための6つの方法が述べられていました。

もともとは詩人が新しい分野を開拓するための方法だそうですが、詩作にかぎらず、ビジネスでも創作でも、大変役立つ考え方ではないかと思い、ご紹介することにします。

師匠を乗り越えるための6つの方法

第一段階 クリナーメン

「誤読」を意味します。つまり、師匠の意図とは異なる読み方。自分独自のオリジナリティー。

いきなりハードルが高いのですが、師匠を乗り越えるためには、必ず自分独自のものを、自分の中になければならないということです。それは、誤解でもいいのです。誤りであってもいいのです。必ず、師匠とはこれだけは違う、というものが、あなたの中に必ずあるはずです。それを見つけることを、最初の第一段階とします。

第二段階 テッセラ

「補完」を意味します。つまり、師匠の仕事を「断片」とみなすのです。それに何かを継足すのです。

師匠の仕事を偉大だ、完璧だと思っているうちは、師匠を乗り越えることはできません。「師匠の仕事には、何かが欠けている」と考えるのです。無理矢理に。師匠の仕事は、大いなる作品の一部であり、自分が完成させてやると、こう考えるのです。
http://twitpic.com/bzo8eg

第三段階 ケノーシス

「反復」を意味します。師匠と同じことを、師匠を乗り越えるために敢えてやることです。

「それ、マネじゃないの?」
と思われる方、そうじゃありません。師匠と同じ能力を得るために、師匠と同じことをするのがマネだとしたら、師匠を乗り越えるために、師匠のやっていることを繰り返すことは、マネというよりも検証作業です。

批判的な態度で、師匠のしていることを反復しながらその意味を理解していくこと。それを、第一段階、第二段階を踏まえた上で、行うのです。

第四段階 デモナイゼーション

「悪魔化」を意味します。師匠のすることを、崇め奉ることが神格化だとしたら、その逆。

師匠を神格化するということは、師匠の仕事が特別なもので、かけがえのないものだと考えることです。では、その逆の「悪魔化」とは? それは、師匠の仕事が決して特別なものではない、と考えることでしょう。

師匠の業績は素晴らしいけれども、師匠だけではなく、世の中の偉人はみなやっていることだと知り、普遍的なものなのだと考えていくことです。師匠を一般化するのです。そうして、師匠の信者となることを、やめるのです。

第五段階 アスケシス

「排除」を意味します。自分の中で、師匠からもっとも影響を受けた部分を切断するのです。

師匠から独立するのは、大変です。師匠から大きな影響を受けている訳ですから、それから自分独自のものを確立するのは、困難を極めます。そこで、師匠から最も影響を受けた部分を、敢えて切り離す勇気を持つことです。

たとえば、日本画を師匠から学んだとします。師匠は鳥を描くのがうまく、中でも孔雀を描かせれば日本一と言われ、弟子のあなたも、同じく孔雀を描くのを得意としていたとします。

アスケシスの段階に来た場合は、この師匠から独立すると決めたならば、今後は一切、孔雀を描かない、と決意することに当たるでしょうか。

師匠から最も影響を受けた部分を封印することで、師匠の影響を排除する、という苦渋の決断が、ここでは必要です。

第六段階 アポフラデス

「帰還」を意味します。自分のような偉人を教えた師匠として、師匠を褒め称えます。

師匠を褒めるのは、あくまで自分の価値を上げるため。もはや師匠は、自分を作り上げた部品の一部です。偉大なる見上げる存在としてではなく、かけがえのない自分を作り上げた土台として、師匠を祭り上げるふりをして師匠を自分の下に置いてしまうのです。



いかがでしょうか。それぞれの言葉には、他の解釈もあるようですが、私にとってはこの解釈がしっくり来ました。もしも師匠を乗り越えたいと思う方がいたら、ぜひ、こういった考え方があることを、知っておいてください。いつか役立つかもしれません。




※ちなみに、冒頭の写真は、ジュリアナ東京でセンスを振りながら踊っていたことでおなじみの荒木師匠。彼女が講師を勤める結婚予備校のHPより。


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