2012年11月18日日曜日

『009 RE:CYBORG 』を観てきました!

以前、ブログに書いたことがある、神山健治が監督した『009 RE:CYBORG 』
石ノ森章太郎が未完とした『サイボーグ009』を、『東のエデン』『攻殻機動隊 S.A.C.』『精霊の守り人』などを監督したことで知られる神山氏が「完成」させたそうですが、その映像美に当てられて、発表前から楽しみにしていました。

ところが、いろいろと用事が重なり、公開直後に観ることができませんでした。
あれだけ騒いでいた割には少々遅く、先日やっと観てきました。

断言しますが、1,800円払って観る価値は、間違いなくあります。
とにかく、映像が斬新でした。

初めて『マトリックス』を観た時に、誰もが驚いたことと思います。

日本のアニメが生み出した様々な表現を、CGでリアルに再現しただけではなく、それ以上の映像表現を実写で見せてくれたのが『マトリックス』でした。

あの映画を感動した時以来の興奮を、この映画では覚えました。
映画を観る動機は人それぞれでしょうが、今まで観たことのない映像表現に触れることで、自分の想像力の範囲を広げる体験をすることも、醍醐味の一つと言えます。

たとえば「歩く」という行為を、ただ脚を動かすことで表すのが最低限の表現だとしたら、服の上からでも感じられるような微細な筋肉の躍動や、次々に切り替わる背景、次第に鈍くなる歩みのスピードなどで単純な動作に奥行きを与えるのが、より高度な表現だといえます。

そういった動きを、真実以上に細かく描くことで、リアルの歩行よりも、もっと美しく思えたりします。
より美しく描かれた動作には、私たちの目を知らず知らずの内に奪う効果があるのです。

今まで観たことのないような美が、とことん詰まった映画でした……。
これ以上具体的に書くとネタバレになってしまうので、これから009を観るのを楽しみにしている方々以外だけが、下記をクリックしてお読みください。

※ちなみに劇場情報は、こちらとなっています。
http://009.ph9.jp/theater/


















ここからは、完全ネタバレ注意です↓


すでに宣伝動画でご覧になった通り、サイボーグたちのそれぞれの能力を使った活躍が、リアルに描かれます。

これが鳥肌が立つほどかっこいいのです。
黒人のピュンマと赤ん坊のイワン以外は、全員大活躍します。
ただ、一番活躍するのは、ジェット・リンクです。

002であるジェット・リンクの能力は「飛ぶ」こと。
「飛ぶ」という行為をこれほどスタイリッシュに描けるということに、驚嘆しました。
爆煙を吹きながら飛ぶミサイルの表現といえば、板野サーカスが有名ですね。
『009 RE:CYBORG 』hはその伝統を受け継ぎつつ、映像はCG効果でよりリアルに、より美しくなりました。
こんなに「飛ぶ」という単純な行為を見るのに夢中になったのは、久しぶりでした。
「飛行」のシーンを観るだけで、映画館に足を運ぶ意味はあります。

この映画のすばらしいところは「走る」「落ちる」「飛ぶ」といったシンプルな表現を、極限まで極めたところにあるように思いました。

たとえば、ジョーが核爆発から逃れるシーン。
走ることを、今ではここまで迫力ある描き方が出来るのか、と驚きました。

ジェットが飛ぶシーンでは、ジェットの身体が膨らみ、まるで鳥のように風をなびかせる様子がとても美しく、いつまででも観ていたくなりました。




まあ、こんな訳で映像という点では大満足だったのですが、難点がないわけではありません。
ただ、











はっきり言いましょう。







































脚本が全然よろしくありませんでした!!



石ノ森章太郎の構想ノートを今に活かすにせよ、もっとやりようがあったのではないでしょうか。
「神」の存在を仮定するのはいいのですが、そもそも神が世界各地で高層ビルを連続爆破させる、という荒唐無稽なできごとを納得させてくれる理由が、最後まで提示されません。
これではほとんどの観客が、肩透かしをくらったことでしょう。

それだけではありません。
まるで夢オチのようないい加減なラスト、活躍しないピュンマ、少女が現われた理由など、解決されない問題が多すぎて、フラストレーションが次々に溜まります。

そして、最後まで解決されないことに、がっかりしました。

こんな終わり方はないでしょう。
もしも地上波で放送されることがあれば、テレビ局に苦情が殺到することまちがいなしです。

それでも、それを上回って余りあるほどの感動を得ることができたのは事実。
それだけ素晴らしい映像美だったのです。
バスツアーに行き、たとえガイドが下手でも、京都の秋が美しいと感じるのと同じで、これほど不満の残る脚本でも、強引に納得させてくれる映像を作った監督に、拍手を送りたいと思いました。

それに、観終わって数日たちましたが、謎が何も解決されないまま放置されたことで、脳がそれを補完しようとして、逆にいつまでも余韻が残るのです。
そう、あの悪名高き『エヴァンゲリオン』とその点がとても似ていました。

ネタバレがいけないのは、ストーリーを追う喜びを省いてしまうことですが、この映画に関して言えば、ストーリーに期待しては逆にダメ。
ネタバレしたところで、観る価値がなくなる、ということはありません。

ぜひ、一度映画館に足を運んでください。
いや、あの迫力は、映画館でないと味わえません。
映画館で観る価値のある映画です。





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