2014年10月14日火曜日

「ラグビーは紳士のスポーツ」という言葉の、本当の意味

よく、
「ラグビーは紳士のスポーツ」
と言われます。その割にはラグビー出身者にはガラが悪い人が多くありませんか? さらに、不祥事もよく耳にしませんか?

私、不信感を持っていたんですよ。どうして彼らが紳士なんだろう、と。

私の高校にもラグビー部がありまして、かなりの強豪でした。しかし、その中に1人いけすかない野郎がいましてね。しかもモテている。

私も体育会系でしたが、女っ気がさらさらなく、恋愛関係では悲惨でした。それに比べると、彼らは高校の中心的な存在。やっかみ半分、ラグビー部のこと、あまり好きじゃありませんでした(もっとも嫌いなのは応○部でしたけど)。

ところが、先日「なるほど」と思う説明を聞いて、目からウロコが落ちました。

イギリスが、階級社会であるということを、多くの人は聞いたことがあると思います。大きく分けますと、地主・貴族が中心となった上流階級、資本家や弁護士などの専門家が中心の中流階級、労働者階級の3つ。

今では緩和されていますが、昔は上流階級と労働者階級の差はもっと露骨で、なにより経済格差が天と地ほどもありました。

だから昔は、上流階級と労働者階級は、見た目が違ったそうです。上流階級の子弟は栄養価の高い食事を取っているため、背も高く、スポーツで体を鍛える時間もあったために頑健な肉体を誇っていました。

それに比べて労働者階級の子供たちは満足に食事を取れず、いつも腹をすかしていたため、成長しても背が低く、痩せていたそうです。

彼らの間には、歴然とした肉体の差があったため、自ずから、人間には上下があることを悟ったのだといいます。ケンカをしても、一対一なら、必ず上流階級の人々が勝つのですから。

さて、こうした支配者側の人々のことを「紳士」とイギリスでは呼び習わしていました(ジェントリには、もっと深い歴史があるのですが、詳しい経緯はご自分でお調べください)。

ラグビーは御存知の通り、背の高いゴツい人間にとって有利なスポーツです。つまり、
「ラグビーは紳士のスポーツ」
というのは、肉体的に頑強でたくましい上層階級の人々=紳士のためのスポーツがラグビーである、という意味であり、ラグビーをすればフェアになるとか、そういう意味では無いのです。

では、労働者のためのスポーツとは? それがサッカーです。

ラグビーもサッカーも、イギリスが発祥です(ゴルフやラクロスなど、イギリスが発祥のスポーツは多いです。イギリスではイヌが昔から大切にされており、イヌは御存知の通りボール遊びが大好きです。そこからボールを使ったスポーツが多く生まれたのではないかと私は考えていますが、それはまた別の話)。しかしやってる人が違います。

今でこそサッカーも選手の大型化が進みましたが、昔はそれほどでもありませんでした。往年の名選手・マラドーナは166cmですし、現在の最高のサッカー選手と言われるメッシは169cmです。それでも2m近い選手と互角に戦えるのがサッカーというスポーツです。

ボールは地表近くを移動しますから、背の高さが意味をなさないのです。足で球を移動させることが体格差を消し、平等をもたらすのですね。

だからこそ、体格の劣る労働者階級のスポーツなのです。体格の優れた親からの遺伝や、子供時代の栄養状態よりも、その後の努力やセンスがものを言う世界です。労働者が夢を持て、自分を投影できるスポーツなんですね。

ワールドカップが盛り上がる理由もそこにあります。国同士の対抗戦になると、経済格差以上に人種による体格差が問題となります。身体の大きい者が有利なチームスポーツ――バスケットとかラグビーとか――は、特定の国がどうしても有利になります。それに比べてサッカーは体格の差が大きなアドバンテージとならず、特定の人種が有利とは言えないからこそ、平等で面白いのです。

ちなみにラグビーでは、他のスポーツとは違い、3年その国に居住していれば、国籍が異なっていてもナショナルチームに加われるという特別ルールがあります。体格の違いが露骨に出てしまうスポーツなので、そうでもしないとワールドカップでは一部の国しか勝てないために取れれた措置なのでしょう。

日本でも、早慶だとか明治だとか、私立大学がラグビー強豪校として名を馳せたのも同じような理由ではないでしょうか。金のある家の体格のいいボンボンにとって有利なスポーツだから、彼らが歴史的に強かったのでしょう。

「ラグビーは紳士のスポーツ」
と言いますと、なにやらラグビーが高尚なもののように思えますが、何のことはありません。金持ちのためのスポーツである、という意味だとしましたら、それほど評価するキャッチフレーズではないでしょう。

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