2013年3月1日金曜日

苫米地英人について

先日家の中の資料を整理していたところ、苫米地英人の講演会の速記録が出て参りました。

その内容に触れる前に、苫米地英人について、まずは説明しましょうか。彼の本業は人工知能研究。ところが、それ以外の活動で有名な御仁です。彼の略歴について、一番よくまとまっていた、Amazonのものを一部ご紹介しましょう。
 1959年東京都生まれ。脳機能学者、計算言語学者、認知心理学者、分析哲学者。
上智大学外国語学部卒業後、三菱地所に入社。2年後イェール大学大学院に留学。同大学人工知能研究所、認知科学研究所研究員を経て、カーネギーメロン大学大学院に転入。計算言語学の博士号を取得する(日本人初)。(中略)在学中に世界初の音声通訳システムを開発したのを皮切りに、オウム真理教信者の脱洗脳や、各国政府の対テロリスト洗脳防止訓練プラグラムの開発・指導、能力開発プログラム「PX2」の日本向けアレンジ、国際健康健美長壽學研究會顧問、國際気功科学連合會副会長と、その活動は多岐にわたる。――Amazon略歴より――
とにかく派手な経歴の持ち主です。もともと学生ディベートの草分け的存在であり、元オウム真理教の中心的な存在だった上祐史浩とは、ディベートリーグの先輩後輩の仲でした。

★ <対談>麻原彰晃四女・松本聡迦×脳機能学者・苫米地英人【1】
★ <対談>麻原彰晃四女・松本聡迦×脳機能学者・苫米地英人【2】
★ <対談>麻原彰晃四女・松本聡迦×脳機能学者・苫米地英人【3】

苫米地英人が有名になったきっかけは、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教信者の脱洗脳を多数成功させたことでしょう。

1995年、オウム真理教は様々な被害を社会にもたらします。ところが彼らの反社会的行為を取り締まることは、当初、大変困難でした。憲法が宗教活動を厳重に守っていたからです。

サリン製造の証拠が明らかになっていない時点では、うかつにオウム真理教の活動を取り締まることはできません。オウム真理教が既存宗教と異なる存在である、という社会的合意が、まだ出来上がっていませんでした。布教と洗脳、お布施と寄付金強要、拉致監禁と独房修行を区別することが出来なかったのです。

そこに苫米地氏が登場しました。マスコミにアメリカの心理療法の概念を多数持ち込み、オウム真理教の洗脳行為が共産国や自己啓発セミナーの洗脳行為に類するものであることを指摘し、

「オウム真理教の行為は人格操作を目的とした道義的に誤った行為であり、既存宗教のものとは根本の発想が異なる」

という定義付けをおこないました。

オウム真理教は宗教ではなく、擬態宗教、麻原彰晃の欲望を実現するためのカルト団体である、というイメージを作り上げることに一役買ったのです。

苫米地英人氏は「洗脳」に関する一権威となりました。様々なメディアへ露出するようになります。

ところが、天才にありがちで、他人の気持ちを理解しようとせず、常識や倫理をわきまえず、自分を特別な存在だと過信するところが、彼にはありました。脱洗脳をおこなった患者である、元オウム真理教信者女性と結婚したり、国松元警察庁長官を撃ったという元警察官の証言を催眠で引き出したという主張を、ゲリラ的にマスコミに発表したり、突飛な行動ばかり取るようになり、人々の信頼を次第に失っていきました。

カウンセラーが心理的に無防備な状態にある患者と個人的な関係を結ぶことは本来あってはいけないことです。元警察官が長官狙撃の犯人であることも、立証されないままです。

この人は、ドラッカー説くところの「真摯さ」に欠けているのでしょう。頭が良すぎるせいか、愚直にものごとに取り組んだりだとか、時間をかけて何かを証明したりだとかを、はなっからバカにしているのです。何かに取り組んでパッパッパとある程度の業績をすぐに挙げてしまうけれども、すぐに飽きてしまい、他のことに目移りし、それまで取り組んでいたことを放り出します。

責任感だとか、他人の窮地を救いたいという思いやりだとか、何かを発見してそれを世間に受け入れられるまで、必死に主張しようという情熱などが、まったく感じられません。2ちゃんねるの創業者のひろゆき氏や、livedoor創業者のほりえもんと似たタイプだといえば、お分かりになるかもしれません。

ただ、彼なりに社会的地位は欲しいようで、宗教を批判していたにもかかわらず宗教にすりより、「チベット仏教会から『阿闍梨』の称号をもらった」とメディアで吹聴して自分の権威づけを図りましたが、後になって嘘だとばれて、逆に評判を落としてしまいました。

★ 日本人複数名の阿闍梨の称号授与についてのご注意

その過程については、下記のブログが詳しいです。

★ 憑き物落としの作法・阿闍梨の大安売り

ただ、このような毀誉褒貶のある苫米地氏のキャラクターを、私は嫌いではありません。元患者と結婚して十年以上連れ添っているのですから、立派なもんです。それに、オカルトな概念(気功、悟り、テレパシー……etc,etc.)を独自の科学的見地から解釈を施す彼の視点・発想体には、学ぶところも多いと考えています。

5年以上前、彼の洗脳原論を読んでから彼に興味を持った私は、彼の講演会に参加したことがあります。そのときにメモしたノートが先日、戸棚の奥から出てきました。

(このまま捨てようかな)
とも思ったのですが、それももったいない話です。簡単ではありますが、内容をご紹介しましょう。

続きは、明日……。

苫米地英人の講演速記


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