2013年11月27日水曜日

猪瀬直樹、自滅の行動パターンに入る

人間長く生きていれば色々な癖ができる。歪みと言っていいかもしれない。

借用証を振りかざしながら語る猪瀬直樹の記者会見を観ながら、私はそんなことを考えた。

猪瀬氏は、これまで何度か記者会見を行ってきた。
最初は、なんとか誤魔化そうと必死になっていた。

ところが、今日の会見ではずいぶん落ち着いていた。その上こんないい加減な借用書をテレビの前で見せて、事態の収拾を図ろうとしている。

これは、徳田毅から受け取った裏金を、賄賂ではなく借りたことに出来る算段がついたからだろう。右翼の代表だとかいろいろと怪しい人間が出てきた。徳洲会側に強面の人間が面会して、因果を含めて彼らに説得し、成功したのではないか、と思う。

双方が誰かの書いた絵図に合意して裏で手を組めば、よほどの新証拠でも出てこない限り、猪瀬氏が逮捕されることはない。真相は闇の中だ。これで事件が幕引き出来るという確信があるから、あのように落ち着いてみせているのだと思う。

……そううまくいくとは思えないけどね。

猪瀬氏について私は以前、こんな記事を書いたことがある。

★ 猪瀬直樹・新都知事のとある一面について ①

猪瀬氏が大量得票して当選して、世間が彼をもてはやしていた頃に、「こいつは当てにならない奴である」ということを紹介したものだ。

彼が以前、いい加減な交通事故鑑定人の話を鵜呑みにして、人気作家という立場をもとに、ある鑑定人を潰そうと企み、それが阻まれた某事件について述べた。

その時の猪瀬氏の行動と、今回の騒動の猪瀬氏の行動パターンが、とても似通っている。

交通事故鑑定人の案件では、
①猪瀬氏、詐欺師鑑定人の言うことを信じこむ。
 ↓
②詐欺師の言にしたがって、実力者である林鑑定人を批判して猪瀬氏のボロが出る。
 ↓
③しかし林鑑定人は反論する場を見つけられず(交通事故鑑定という分野自体が地味であり、当時はネットもなかった)、猪瀬氏は「勝てる」と判断する。
 ↓
④猪瀬氏、林鑑定人をさらに批判してみる
 ↓
⑤とあるメディアに反論の場を提供された林鑑定人により、猪瀬氏糾弾され、敗北。
というパターンを取った。

今回の案件では、
①'猪瀬氏、何者かに仲介されて、徳洲会から裏金(賄賂)をもらう。
 ↓
②'裏金の存在がばれる。
 ↓
③'しかし、裏金は賄賂ではなく借金だと言い張れば、「勝てる」と猪瀬氏は判断する。
 ↓
④'どこでいつ作ったのか分からないような、いい加減な「借用書」をテレビの前で公開する。←今ココ
 ↓
(⑤'裏金は借金ではなく賄賂である、という新しい証拠が見つかり、政治生命が絶たれる……か?)
という流れになりそうだ。

彼の出世作である『ミカドの肖像』という作品に、彼の思考の傾向が現れているように思う。

猪瀬氏は、天皇の神格化とそのブランドの利用の歴史について、丹念に調べあげた。それはたしかにスゴイ。でも、そこから普遍的な真理を導き出すことが出来ていない。

本来数々の事実を丹念に拾いあげるのは、それにより普遍的な真理、法則をあぶりだすためだ。いわゆる帰納法という方法だ。ところが猪瀬氏は、ただ、雑多な知識をこれでもか、これでもかと読者に提示するために集めて我々に見せる。それは普遍的な何かを導き出すためではない。

思うにあれは、
「恣意的に作り上げられた"天皇"というブランドは、実は空虚なものだ」
という思いつきがまず、念頭にあって、それを補強するための材料をひたすら集めたものではなかったか。

ところが、彼が集めた事実の積み重ねからは、天皇が空虚なものだという真理は浮かび上がらない。彼の意図とは違って、浮かび上がるのは歴史的な深みをもった、確固とした存在感だ。

そこで彼はどうしたか? オペレッタ「ミカド」のようなキワモノを持ちだして、
「ほら、天皇陛下はオペラで描かれているように、虚像でしょ?」
と無理やりこじつけようとしたのである。

彼は事実から自分の主張を組み立てたのではない。独善的な思いつきがまずあって、それを証明するために事実を集めているのだ。そして、事実を集めても彼の主張につながらなければ、怪しいものを持ちだしてでも、自説を補強する……それが猪瀬氏の思考のパターンではないか?

目的達成ためには怪しい物でも、考えなしに取り込む。作家として新しいテーマを開拓するためには、怪しい人物の怪しい理論にも飛びつく。政治家になるためならば、怪しいカネにも飛びつく。

それがばれないように、普段からことさらに虚勢を張り、周囲を威圧して黙らせる。これが猪瀬氏のスタイルではないか?

ところが、林鑑定人のような反骨心のある人物が現れたり、徳洲会瓦解のような大きな事件があると、ボロが出る。化けの皮が剥がれる。

もっとも猪瀬氏は、醜態を隠すのが得意だ。有耶無耶にすることに長けていて、そこが凡百の人間と異なる。これまではうまくいっている。

ところが猪瀬氏、時に調子に乗ってしまい、やってしまうことがあるようだ。交通事故鑑定人の案件がそれだ。そんな時、彼は自滅する。

今回、彼は「これが借用書だ」と言って落書きのようなものを公開してしまった。あれは余計な行為だった。警察に問われた時に証拠として差し出せば済む話なのに、そうしなかったのは、後ろめたい過去を隠すために必死になって周りが見えなくなっているからかもしれぬ。たぶん猪瀬氏、このままだと自滅する。惜しい人物を失ってしまった(まだ早いか)。



ところで……
彼が頼ったという一水会代表の木村三浩なる人物。

彼に私は、会ったことがあるかも知れない。

数年前のことだ。新宿の伊勢丹会館8階に「串の坊」に串焼き屋がある。そこで、一水会の元代表の鈴木邦男と、骨法の堀辺正史が食事をしていたのを見た。

二人の顔はこれまでいろいろな媒体で見知っていたため(堀辺氏は和服を着ていたから、ずいぶんと目立っていた)、妙な組み合わせだなと思ったので、よく覚えている。

彼らはもう一人のやや疲れた風体の、少々頭の薄い人物と一緒だった。その人物について私はよく知らなかったため、有名人二人と一緒なのは誰だろ? いずれにせよ、名の知れた人物だろう、と思ったのだが、今から考えるとあれが木村氏だったのかもしれぬ。

サインでももらっておけばよかった。


※「手白澤温泉の魅力 3」は明日書きます。

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