2012年9月14日金曜日

旅行が生活になった夫婦のブログ 「the Everywhereist」


それでは、雑誌『TIME』が選んだ、2011年に英語圏で話題になった人気ブログひとつひとつについて、これからしばらくの間、ご案内していきましょう。

最初に紹介するブログは、『the Everywhereist(遍在者)』です。
夫・ランド氏は世界中を飛び回る仕事をしているのですが、妻のデ・ルイッター氏はそれを家で見送るばかりで、いつも寂しい思いをしていました。
ところが、彼女は仕事をクビになりまして、一念発起して、夫とともに、世界中を旅して回ることにしたのだそうです。
その旅行ブログが、大変な人気となりました。

『TIME』は、次のように紹介しています。
このブログはありがちな旅行ブログではない。デ・ルイッターは絵画のような美しい街や美味しいレストランについて書くのと同じように、浴室の備品に困惑したことや、おかしな外国のテレビ番組、飛行機に一緒に搭乗するハメになった嫌な乗客について赤裸々に書いている。
ちなみに、こちらが夫婦のご尊顔。左が夫のランド氏、右がブログの作者であるデ・ルイッター氏。
たしかに人気ブログのようです。個人のブログなのに、たとえばこの人気記事、

★ 7 Badass Bavarian Foods You Must Try (2012年5月8日)
(あなたが挑戦すべき、7つのとんでもないバイエルン料理)

には、コメントが221もついています。芸能人ならコメントがいくらつこうが驚きませんが、一般人のブログとしては多いですよね。

ちなみに上記の記事は、ドイツのバイエルン料理についての紹介記事です。
バイエルン州はドイツ南部のドイツ最大の州であり、観光の名所として有名です。
日本では、伊藤ハムの「アルトバイエルン」などで知られています。

彼女はバイエルン料理について、こう書いています。
 バイエルン料理をたとえるならば、小さな袖なしシャツを着て非常に重いバーベルを持ち上げているジムの男、だろうか。静脈が、首と頭(だけではなく、静脈があることすら知らなかった部分にまで)に浮き出し始めたような。
 バイエルン料理は大型トラック同士のレース「モンスタートラック」にもたとえられる。比較的繊細な料理であるスペインやイタリア、フランスの料理を、トラックが小さなフィアットやプジョーをレースの中でぺちゃんこにしてしまうように、粉砕する。
バイエルン料理がとにかく破壊力がある、ということのようです。
 あなたはバイエルン料理を食べたいだろうか? 当然食べたいはずだ。とても豊かでもっちりしていて身がしまっている、ドイツビールを満喫することができる地球上でただひとつの料理なのだ。他のどんな料理ですら、あっという間にあなたの胃の腑の隅に追いやられ、そこでふるまわれるビールの素晴らしさで、驚きのあまり動けなくなり、飲み込むことすらできなくなるだろう。
 要するに、ドイツにいる間にバイエルン料理を食べないならば死ぬべきだ、ということだ。ここで、私のお気に入りの料理をいくつかご紹介しよう。この料理たちは、あなたの味蕾を、とんでもない興奮受容体に変えてしまうに違いない。
このあと、バイエルン料理であるプレッチェルだとか鶏の唐揚げだとかが、写真入りで紹介されています。

正直、写真はそこまでうまくないようです。もう少し撮りようがあるだろう、と。
ただ、間違いなく文章力はあります。バイエルン料理を、ムキムキのマッチョ男に例えたり、破壊力抜群のモンスタートラックにたとえたり……力強い料理だということを、手を変え品を変え、紹介する力量はすごいですね。
人気が出たのは、このためかもしれません。

この記事はドイツ料理についての記事でしたが、彼女が紹介するのはドイツ料理だけではありません。
世界中の料理を紹介しているので、ご興味のある方は、是非ブログをお読みください。

世界を旅行するということに誰しもが憧れます。
それができる人は、少数の人達だけです。
そして、その魅力を、沢山の人が面白いと思える文章で伝えることのできる人間は、さらに少数です。
このブログ主は、そのうちの一人なのでしょう。

ちなみに、トップページ右側にあります「Most Popular Stories(最も人気のある記事)」を見ますと、

★ I have a brain tumor. I’ve named it Steve. (2012年6月27日)
(私は脳腫瘍ができた。それに、スティーブと名づけた)

というショックな記事が紹介されていました。
ブログ主は、最近脳腫瘍ができたことがわかり、手術を決意した模様です。
脳腫瘍に「スティーブ」と名づけて、折り合いを付けていこうとする彼女が、とても健気に思えます。

素敵なブログ主の日常に触れていた読者にとっては、突然ブログ主にふりかかった悲劇は他人事には思えなかったでしょう。

これから、彼女はどのような人生を歩んでいくのでしょうか。


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