2013年10月2日水曜日

クラブが風俗扱いになった理由(わけ) その遠因は1933年の「ダンスホール事件」

昨年あたりから、クラブの取り締まりが厳しくなった。

知らない人がまだ多いようだが、ダンスができるクラブは、スナックなどと同じ風俗営業と法律ではみなされており、ソープランドやファッションヘルス、ラブホテルと同じように、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(=風営法)の取り締まりの対象となっている。

風営法の規定では、クラブは深夜1時までしか営業できない(場所によっては0時のところもあり)。しかし、クラブではオールナイトで朝まで騒ぐのが普通である。よって、風営法の取り締まりの対象とならないように、クラブのオーナーは風営法の届け出を行わない、というのがこれまでの慣習だったようだ。

今まではそれを警察が黙認していたのだが、それがこの一年、急にしめつけがきびしくなった。風営法の届け出をしないクラブは閉鎖。届け出したところは、1時までしか営業ができない。
「面白くない」
と言われ、東京の六本木や大阪のキタのクラブでは、どこも閑古鳥が鳴いている。

数年前に、酒井法子や押井守がドラッグで相次いでつかまり、市川海老蔵がチンピラから暴行を受けるなどの事件が起こった。登場人物の交遊場所が六本木のクラブだったため、メディアから注目を浴びた。そのうち、クラブがドラッグなどの売買の温床となっている、と糾弾されるようになった。それがきっかけとなり、今回のクラブ取り締まりへいたったのだろう。

・クラブがどうして風営法の対象なのか
ところが、クラブで踊る客の大半は、まともな人間だ。今では高校生からクラブ通いするのも珍しくない。大学生がサークルの二次会をクラブで行うことも多いだろう。

踊っている人々、特に女性たちの多くは、自分たちが通っている場所が風俗営業店舗だとは知るまい(彼女たちが「風俗通いする男なんてサイテー」などと言っているとしたら、笑える)。

もっとも、この区分けが時代遅れだと思っている人は大勢いる。ミュージシャンの坂本龍一などが中心となって、クラブ営業を風営法の対象から外すように、呼びかけを続けている。

先日風営法違反で逮捕された大阪のクラブ「NOON」の元経営者の金光氏もまた、クラブが風営法の対称となるのはおかしい、と主張する一人。

★ 元クラブ経営者「ダンス規制は憲法違反」 初公判で無罪を主張

彼は、
「法律に違反する風俗営業はしていない」と無罪を主張、弁護側も「ダンス営業を規制する風営法の規定は表現の自由を侵害し、憲法に違反する」と争う姿勢を示した
そうだ。

以前は、社交ダンスも風営法の対象だった。だから、社交ダンス教室は風営法にもとづいて、18歳以下の人間が立ち入ることができなかった(現在は風営法の対象外)。

よくよく考えてみれば、ダンスをする場所が風営法の取り締まりの対象となるのもおかしな話だ。男女が踊っているだけで、性的な接触があるわけでもない。それが1時までしか営業できないなんて法律が、なぜできたのか?

その理由として、風営法について書かれたネット記事を読むと、
「第二次世界大戦後の、欧米化の流れによって乱れた風紀を正すため」
という説明が一般的なようだ。

だが、理由はそれだけではない。

日本では、
「ダンスをする場所はいかがわしい場所である」
という共通認識が、第二次世界大戦以前からあったのだ。ある事件があり、そのために戦前からダンスホールは、警察による厳しい監視下にあった。

当時は警察の力が強かったので、風営法などなくともいつでも規制できたが、戦後はそうもいかぬ。そこで制定されたのが、風営法、というわけだ。

その事件とはなにか。

1933年(昭和8年)に起こった「ダンスホール事件」である。

ダンスホール事件とは
舞台となったのは東京の赤坂溜池町(現在の赤坂2-2-17 ニッセイ溜池山王ビルのある場所)にある、ダンスホール「フロリダ」。

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ここのダンス教師に惚れぬいた34歳の既婚女性・吉井徳子が、彼の愛情をつなぎとめるために、友人の既婚女性をセックス相手として次々に斡旋。それがばれて、警察沙汰となった。当時は不倫は犯罪だった。

その上、吉井徳子はただの女性ではなかった。先祖を藤原道長におく、藤原四家の末流である柳原家の出身。夫は、元薩摩藩士を祖父に持つ、伯爵・吉井勇。華族の中の華族が引き起こした性的なスキャンダルだったから大変だ。世間は大騒ぎとなった。

もちろん吉井夫婦は離婚。徳子がダンス教師に紹介した既婚女性たちもまた、華族が多かったものだから、華族社会は大混乱に陥った。

それ以降、ダンスは警察の目の敵とされた。先述の通り、ダンスホールは警察の厳しい監視下に入り、1940年(昭和15年)には、戦局の悪化を理由に、すべてのダンスホールが閉鎖されてしまった。

これ以降、ダンスする人間はモラルに欠けている、という共通認識が人々の間にはびこるようになる。逆に、ワルを自称する人間はダンスホール、戦後はディスコやクラブに喜んで出入りするようになる。

よって、いまでもクラブはワルのたまり場だ。だから現在でも、クラブでは他の場所よりも違法行為が行われやすく、風営法は改正されぬまま、今にいたっている。

欧米なんぞでは、ダンスをするのは当たり前だ。高校生は「プラム」と呼ばれる高校3年生最後のダンスパーティーでいかにモテるかに、勝負を掛けているほど。クラブをアンダーグランドな場所として認識しているのは、日本くらいだろう。

今ではその記憶も薄れているが、ダンスをなんとなく「いかがわしいもの」という認識が残っているのは、ダンスホール事件の残滓だろう。

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