2012年6月21日木曜日

電子出版と金融自由化

今から10年ほど前は、世界中が好景気でした。金融自由化の波が世界中を覆い、大量のマネーが投資先を求めて瞬時に移動しました。人はさらなる利益を求めて、単なる株の売買から、株の利益幅を売買するオプション取引までをもおこなうようになります。

ところが、サブプライムローンの焦げ付きから始まった信用収縮により、世界中が同時に不況となっていました。その後もリーマン・ショック、ギリシャの経済危機に始まるユーロ崩壊不安などが続きます。

いまでもスペインの信用不安や中国の土地バブルの崩壊などの懸念がくすぶり、世界は混迷の中にあって、不況の出口が見えません。それにしても、スペインの25~34歳の失業率が40%近いというのも、すさまじいですよね。

ところで、電子出版が取りざたされています。アメリカではとうとう、電子出版の売上高がハードカバー書籍の売上高を大きく上回ったそうです。

アメリカでついにeブックの売上がハードカバー書籍を抜く

ただ、記事で触れられた、電子出版の売上高を年ベースに直すと、約540億円といったところ。主要国の書籍発行点数と売上高 2008年 を参考するなら、アメリカの書籍売上高が1兆9000億円ほどですから、かなりの開きがあります。アメリカでは単に、ハードカバー部門がそれほど売れていない、ということだけなのかもしれません。

ネット界ではこういった電子出版部門の躍進を手放しでほめたたえているようですが、この先に、果たして明るい未来が待っているのでしょうか。金融と情報は、たいへん似ています。どちらも実体がなく、人々が価値があると信じるからこそ、価値を与えられている形而上の存在です。

金融自由化がもたらした出口の見えない不況が、電子出版の隆盛の果てにもたらされることは、果たしてないといえるでしょうか。

金融自由化が、現在のような世界同時不況をもたらした理由として、過剰な資金の流動性が挙げられます。様々な規制が取り払われたために、金融商品が数多く開発されて、監視の目が行き届かなくなりました。

その中にはサブプライムローンのような、ほんのわずかな不動産価格低下で連鎖的に破綻する商品があり、それが大量に流通して、大不況の原因となりました。同じような災害が、電子出版によってもたらされたりしないのでしょうか。

たとえば、こんな未来。ほとんどすべての出版物が、電子出版物に置き代わった未来。出版は大変容易になりました。ここのようなブログでさえ、一年もたてば、電子出版物として売買の対象となり、世間の有名な著者とほとんど同じ体裁で、並列的に販売されるようになっています。そうなると、もはや、プロとアマとの区別のなくなった世界になるでしょう。

そうなったときに、情報コンテンツの価値は下がり、回転は今以上に大きくなるでしょう。でも、ベストセラーが生まれにくくなり、長期にわたるロングセラーが生まれにくくなるでしょう。

一昨年にベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という作品がありました。

200万部売上という金字塔を打ち立てましたよね。今の出版界では、人気に便乗しようという出版社はあっても、その売り上げを潰そうという動きはありません。その後、似たような企画が次々に現れましたけれども、他社もそれなりに遠慮をして「もしドラ」と完全に似たような企画を出すことはありませんでした。

ところが、もしも電子出版が主流となったら、このような紳士協定が守られることはなくなるでしょう。まるで今の2ちゃんねるのように、著作権法ぎりぎりの似たような企画、類似物が、『もしドラ』が出版された直後に数多く出版される状況になるはずです。

ネタなんて、いくらでもみつかります。
たとえば、『万が一、ブラック企業に勤めるゲームオタクが、ゲーム会社に転職しようとしてノイマンの「ゲーム理論とその実践」を読んだら』のような企画は、瞬間的に思いつけますよね。

電子出版が主流になると、あからさまなパクリ企画、似たような企画が、あっという間に乱立していくでしょう。ポイントは、出版物を、出版社では制御不能になる、という点。今の数十倍の出版物が現れても、読者が数十倍になることはありません。

やがて、なにかをきっかけに、人々が情報にお金をかけることを拒否するようになる、なんてことは考えられませんか?

金融自由化の前は、サブプライムローンのようなジャンク商品が、世界中に大量に流通することなど考えられませんでした。同じように、質の悪い情報が、世界中に大量に流通し、それがバレて、人々が急激に、情報にお金を渋るようになり、業界自体が大混乱に陥ってしまう……そのような未来が待っていないと、果たして言えるでしょうか。

案外、ありうると思うのですけれどね。


本日読んで、気になった記事はこちら。↓

★ 外気が高いほど内部が冷える「原始的なクーラー」の作り方
この発想はいいですね。日本人の発明家の、非電化冷蔵庫と似ています。

非電化冷蔵庫の構造と原理

電気の要らない生活が世界に広がれば、今よりももっと過ごしやすい世界となるでしょう。


★ 日本のSF、ハリウッドへ…2作品映像化へ
冲方丁という人物が、最近プッシュされていますよね。自分を売り出すのに長けているように思えます。『マルドゥック・スクランブル』も、言われているほど面白いと思いませんでしたし、『天地明察』もそれほどとは思えませんでした。自分と感性が合わない人物が次第に人気が出てくるのを見るのは、複雑な気分です。


★ 「家族になろう(よ)」で、アラフォー女芸人・椿鬼奴が本気で婚活にチャレンジ!!
先月のニュースですが、最近、この番組のポスターが駅の構内に張っていてい、驚いたため。
私が最初このポスターを見た時思ったのは、
「伊東美咲も、結婚して顔が伸びたな」
ということ。まさかまさか、椿鬼奴さんだったとは!!


★ 「いいモノを安く」が衰退の元凶 日本一幸せな会社・未来工業創業者・山田昭男さん(2)
いいことをいいますね。未来工業のような素晴らしい会社には、ぜひ売上を伸ばして欲しいです。


★ マルチ商法の方がいう成功のイメージがテンプレな理由
平日の仕事帰りにベローチェやスタバに行くと、必ずといっていいほど、マルチ商法の勧誘が行われています。彼らの言葉に必ず出てくるのが、「世界をクルーザーで回ろうよ」という話。マルチ商法の上級勧誘員には、クルーザー所有者がやけに多いようです。不思議です。

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