2013年5月17日金曜日

水沢アリーという恐怖

水沢アリーというタレントのことをご存知でしょうか?

以前、こんな少女マンガを読みました。
誰からも人気者の女子高生のクラスに転校生がやってきます。転校生は最初はおどおどしていて、からかわれたりするタイプだったので、それに同情した主人公は転校生に親切に接しました。

やがて、その転校生は主人公にやたらとまとわりつくようになり、主人公は鬱陶しく思うようになりましたが、そのうち不思議なことが起こりました。転校生は人気者の女性にソックリな容姿と性格へと変化していき、やがて人気者の女性の立場と入れ替わるのです。

水沢アリーを見た時に真っ先に思い出したのが、そのホラーマンガでした。

あのタイトルは何だったのだろう? 思い出せません。主人公はそれまで、誰からも好かれるキャラクターだったのに、その転校生が目立つに連れて、主人公が転校生を真似ている、と言われるようになりました。立場は逆転され、学校の人気者となった転校生からイジメられ、そして様々な苦難に陥ってしまうのです。

ローラは同じような恐怖を水沢アリーに覚えてはいないでしょうか? 誰からも際立った自分だけの個性だと信じていたものが目の前に他人として現れ、自分の存在価値がガラガラと崩れていく恐怖です。

自分の個性と他人のものの区別が曖昧になり、自分が否定されたような恐怖。しかも自分よりも時に大きな人気を得るという悔しさ。

その上、真似をする相手が自分よりも可愛ければ、まだライバル心をいだけますが、どう見ても下位劣化版。自分よりも劣った人間が、自分に何の断りもなく、自分そっくりの仕草をして、それが彼女自身の個性だと言いはる様には、生理的な嫌悪感をいだくものです。

モノマネタレントと歌手とのトラブルが、時々話題になります。モノマネタレントに本人が出会っても、必ずしも好意を抱くとは限りません。自分の短所などを誇張されたグロテスクな自画像を見せつけられると、時に人は拒否反応を起こします。

でも、モノマネタレントにはモノマネをする相手に対する敬意がありますし、そのタレントに取って代わろうとは思わないもの(人気が凌駕することはありますが)。しかし、水沢アリーの場合は違います。水沢アリー自身、真似ではなく本物だと言い張っています。

ローラのキャラは作り物っぽかったけれども、それを性格の良さでカバーし、世間に彼女独自のものとして認知させて、彼女を受け入れさせる土壌を作りました。でも、水沢アリーにはその必要はなく、ローラの下位代替品として市場を蹂躙すればいいだけ。悪貨は良貨を駆逐します。

水沢アリーが人気者となって、本家をディスるようになっても、ローラはあのキャラを貫けるでしょうか? 醜悪な自画像を見せつけられても演技を続けられるほど、ローラのココロは強いでしょうか? ローラが自分を見失ったとき、ローラの居場所はなくなってしまうかもしれません。

それにしても水沢アリーは気持ち悪い。まるでリアルなホラーを目の前で見せつけられているような恐怖を覚えます。
伊藤潤二傑作集 1 富江 上 (朝日コミックス) 

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