2014年11月24日月曜日

下手な嘘には腹が立つ 「#どうして解散するんですか?」

今年は、嘘が目立つ年です。

小保方氏のSTAP細胞の発見の虚報に始まり、最近の元競泳選手の富田氏の開き直りに至るまで、世間をダマせると舐めてかかった人々が、世間から手ひどくしっぺ返しを受けるという事件が多く起こりました。

同じような事件は続くものです。ある大学生が世間を舐めて不特定多数の人々をダマそうとして、失敗したニュースが話題となっています。

「10歳の中村」を名乗るユーザーが作った衆院解散の是非問うサイト「どうして解散するんですか?」が21日からインターネット上で注目を浴び、「小学4年生が作ったとは思えない」と炎上。関与を疑われていたNPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」の代表・青木大和氏(20)が22日、ツイッターで「今回の一連の騒動は全て私1人が行いました」と謝罪した。
現在彼が作ったサイトには、代わりに、謝罪文が掲載されています。

もちろん、寄せられた声の中には、僕たちへの誹謗中傷、暴言、愚痴など、#どうして解散するんですか?への問いではない声もありました。
でも僕は、これだけの方が目にしてくださった今回の問い「#どうして解散するんですか?」を、いま一度日本について考え直す機会に出来ないだろうかと思っています。
(中略)
今回、僕の軽率な言動により、関係のない多くの方に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
最初は私も腹を立てました。しかし、それなりに反省しているようですし、よく考えればまだ20歳。考え方が幼いのも無理はありません。それが見当違いの反省だとしても、立腹は収まりつつあります。

なぜ彼がこのようなことをしたのか? もともと炎上狙いと新党結成という狙いがあったことが、以前の言動から明らかになっています。

Tehu:政治ネタは炎上しやすいから、絶対に来る。
青木:それで炎上したときに、全国で「オレも意見がある」「オレも政党をつくる」みたいなツイッターのリプライが絶対に来るから、そしたら「じゃ、おまえも政党つくれよ」と言う。それで地域政党がいくつか出てきて、盛り上がってくると思うんですよ。
元々の炎上サイトを確認しましても、小学4年生が作ったという体裁を取っていながら、難しい漢字がそのまま残っていたり、文字が妙にうまかったりと、粗が目立つのは事実。このページに掲載した画像は、彼が作ったサイトのページの1部です。彼らはそもそもバレることを前提にあのホームページを作っていたのでしょうね。

「本当に小学4年生が作ったはずがないでしょ? 見て分からないの? ネタですよ、ネタ」

と言って舌を出してダマした人々をバカにするところまで、彼らは織り込み済みだったのかもしれません。

ところが予想以上にこの記事は炎上し、彼らの手では収集がつかないほどの非難を受けてしまいました。

青木氏はNPO法人代表を辞任し、Tehu氏もTwitterでの発言を自粛。今頃は弁護士などを交えて、今後の対策を考えている最中かもしれません。

なぜこの件がこれほど炎上したのか。それについて作家の岩崎夏海氏が面白い分析をしています。

2人が炎上した真の理由――それは「人々を苛立たせたこと」だ。
では、どういう理由で苛立たせたのか?
それは、2人が「多くの大人は政治に関心がない」と勘違いしているところだ。それに苛立たされたのである。
この慧眼は、さすが作家だと思いました。おっしゃるとおり。みんな、政治に関心がないわけではありません。だから、政治番組は視聴率がよく、ネット上でも政治ネタは盛り上がるのです。それなのに選挙に行かないのは、まともな政治家がいないからあきらめているだけ。決して政治に関心がないからではないのです。

しかし、岩海氏、その後の文章がすべてを台無しにしているのは残念。選挙に行かない人々と、イジメを見てみぬ振りをする人々を同列視するのは、ちょっと違うのではないでしょうか。また、
ほとんどは、「イジメられているやつも悪い」と思っているときに、見て見ぬ振りが行われるのである
という分析も自分の経験上、あたっていないと思うのです。それよりも、巻き込まれるのが怖い、めんどくさい、という恐怖の方が大きいのではないでしょうか。

閑話休題。

今回の青木氏が引き起こした事件のそもそもの要因は、安易に他人をダマせると勘違いした人間がついた杜撰な嘘を目の前にして、自分がバカにされたように多くの人々が感じたからではなかったでしょうか。

今ではネットで世論を操作しようと試みるのが当たり前の世の中となりました。まとめサイトなどには広告代理店が相当数入り込んでいますし、Twitterでバズらせて流行を生み出そうとすることも多く行われています。

その分、私たちの精神的な負荷は多くなっています。ネットの話題の一つ一つ、盛り上がっていそうに思える話題の一つ一つを、
「これは嘘かな? これは本当かな?」
と吟味しなければならないからです。10年前に比べますと複雑になりました。

嘘が横行すると、嘘に対して不感症になるのでしょうか? 逆でしょう。むしろダマされないよう、嘘について敏感になり、普段、嘘を突き止めるのが困難な分、あからさまな嘘には逆上してしまうのです。

今回の青木氏の作品には、あとでネタだと強弁するためか(見破れなかった情弱のお前が悪いと指摘できる)、小学4年生らしからぬ表現、文章、きれいな文字で作られています。そして、自民党を馬鹿にし、民主党を持ち上げる意図が透けて見えます。

一方で雑な作りをしながら、もう一方でメッセージを含ませる。つまり、嘘はやがてバレるだろうが、メッセージが多くの人に届くまではバレないだろう、しばらくはダマせるだろうと、社会を舐めてかかっているのですね。高をくくっているんです。

この青木氏には、周りの人間たちが政治に関心がない劣った人間だ、という思い込みがあるものですから、いまだに、
実際に選挙が行われることは決まってしまった事実です。僕自身も人生ではじめての選挙です。だからこそ多くの人に#どうして選挙するんですか?と問うてもらい、日本の未来を考えて1票を投じてほしいと強く願っています。
という、傲慢な文章を、謝罪文に含めています。詐欺師のお前に他人を導く資格はもうないよ、お前に言われたくないよ、と私は思いましたけれども。これも火に油をさらに注ごうとする、彼なりの炎上芸なのかもしれませんが。

「あんなチャチなサイトで少しでもダマされるほど、俺達はそこまで馬鹿じゃないよ」
と今回のニュースでは誰しもが感じたはず。でも、自分のことを頭がいいと思い込んでいる人々には、だまそうとされた側がむかつく感覚がわからないのかもしれません。そして、他人の自負心を傷つけてはいけない、という思いやりもないのかもしれません。それは政治家志望の人間としては致命的でしょう。


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