2014年11月14日金曜日

顔面攻撃ありは実践的か

夢枕獏の作品(名は覚えていません『餓狼伝』だったか、どうだったか……)の冒頭部分で、とある登場人物がこんなことをうつぶやくシーンがあったと思います。

「自分は背が低い。顔面攻撃さえできれば、得意技の上段回し蹴りで一発KOできる機会があったのに、この流派ではそれができない」

もう30年ほど前の作品で、読んだのもずいぶん昔なので記憶は曖昧です。身長の低い空手選手が、顔面攻撃を認めない自分の流派では自分は万年2位だと悟り脱会、より"実践的な"道を模索していく……そんな話だったでしょうか。

夢枕氏の本を読んだ当時、私は中学生か高校生の子供でした。だから単純に、
(顔面攻撃を認めない格闘技なんて使えないな)
(伝統空手なんて、実践的じゃないな)
などと考えて、伝統空手をひそかにバカにしていたんですね。

ところが、最近、また格闘技を習おうと思っていろいろと調べていくうちに、このことをふと思い出しまして、改めて考えなおしてみました。

よく「ケンカが強い」などと言われる人が大勢います。芸能人ならジェリー藤尾とか、渡瀬恒彦とか。

けれども、よくよく考えますと、彼らはそりゃ、それなりに強いのでしょうけれど、それよりもケンカをして相手にケガをさせながら一度も刑務所に入れられなかった、というところがうまいんですよね。

つまり、相手を叩きのめす、という単純な強さに加えて、
「勝てない相手、勝てない場所では絶対に喧嘩しない冷静さ」
「逃げ足の早さ」
があったことや、
「逃亡を助けてくれる仲間」
「助けてくれる弁護士や事務所」
があったこと。さらには、
「相手を傷めつけても大怪我をさせない喧嘩術」
をよく知っていたのがすごいんですよね。

特に最後の、「相手を傷めつけても大怪我をさせない」というところがポイント。顔面攻撃などの、頭部への攻撃には、彼らはかなり気を配ったのではないでしょうか。

顔面攻撃は、一発で相手を倒せる方法として、たしかに有効です。でも当たりどころを間違えば、相手を死に至らしめてしまう危険性が大変高いのです。喧嘩をする機会が多ければ多いほど、慎重でなかった人間は刑務所の中へと沈んでいったことでしょう。

★ 顔面に左ストレート「私のパンチで致命傷、間違いない」 公園でスパーリング、男性死亡 大阪
「左ストレートが顔面に入った。私のパンチで致命傷を負わせたことは間違いない」と容疑を認めているという。
 逮捕容疑は19日午後11時35分ごろ、自宅近くの公園で、知人のアルバイト、松本健嗣さん(20)=同区巽東=の顔面を殴り、死亡させたとしている。
上記の記事は先々月のものですが、たまに、顔面をパンチして相手を死に至らしめたというニュースは各方面で話題になります。

頭をぶつけたり頚椎をひねったりすれば、人間、意外に簡単に壊れてしまいます。パンチ一発で動かなくなり生死不明となった人の動画を、検索しますとすぐにいくつも観ることができるでしょう。

ボクシングで頭部にパンチ、観た目はかっこいいんですよ。一発で相手が動かなくなったりするから。でもその後、相手が死んだら殺人ですよ。かなりリスキーだと思うんですよね。

冒頭で紹介したプロの格闘技の選手ならばともかく、私たちにとっての"実践的"とは、たとえば暴漢におそわれたときに身を守るための方法。ただそのときに、相手に大怪我を負わせれば過剰防衛となり、実刑を受けるかも知れません。高額の賠償金を支払う必要があるかもしれません。

顔面攻撃をせずに相手をねじ伏せるための方法論の方が、はるかに、この文明社会では役に立つ気がします。組み技に限定しません。ボクシングだと、ボディ攻撃だけで相手をノックアウトしていく方法とかね。

そんなことを考えますと、顔面攻撃を試合で許可しない伝統空手の方が、より"実践的"だったのかもしれないな、などと思ったりするのです。

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