2014年9月10日水曜日

日本エレキテル連合の面白さの理由

エレキテル連合のコントを観たのは比較的最近なのですが(周回遅れもいいところです)、コントを途中まで観た段階では、どこが面白いのか分かりませんでした。

(老人男性が中年ホステスを口説く様を笑いものにしてるだけじゃないの?)
(白塗りメイクのキワモノ狙いか?)

このネタが子供たちの間で流行っているという情報や、日本テレビの24時間テレビで彼女たちが活躍をしたというニュースは知っていました。ところが、よくある、常識はずれの人間の滑稽な行動を笑いものにするコントとの差異を見いだせません。

それよりも、老人の勘違いと醜い中年女性のせめぎあいを、若い女性2人が笑いものにするという構図が、最初は不快でたまりませんでした。

どんなネタかは論より証拠、2人のコントを、まずはご覧ください。

初めて二人のコントを観た人だったら、最後まで観て、びっくりしたでしょう。

……まさか「明美ちゃん」が機械じかけのダッチワイフだった、というオチがあったとはね。

途中で期待値が低くなったために、オチを知ったときの爽快感といったらありませんでした。もちろん、大爆笑です。そのあと、笑い疲れてぐったりしてしまうほど。

子供たちに受ける理由はわかります。

いやらしい老人に話しかけられたロボットは、同じセリフしか言わないポンコツ品なので、老人と意思の疎通はできません。その上、途中で完全にぶっ壊れてしまいます。ところがそれまで意思の疎通が出来なかったはずなのに、最後に交換されることを理解したかのように、首を上げて、
「ダメよー、ダメダメ」
と大声を上げます。ゾッとします。

ダッチワイフだと明かして落とし、さらにそれが突然意思を持ち始めるという意外性で驚かせるという二段階構成です。

子供たちはもともと、気味の悪いものやロボットが大好きです。そして、コミュニケーションギャップをもとにしたギャグも大好き。老人の要求をすべて跳ね返していた、
「ダメよー、ダメダメ」
というセリフを、最後は老人にすがり、お願いするために発言するという面白さなど、子供たちに分かる面白さがてんこ盛り。

これが受けるのはよく分かります。

子供でも分かる面白さに加え、大人にしか分からないネタも数多く組み込まれています。

まず、老人が性欲処理用のダッチワイフ相手に会話をする、というシュールな光景。老人の年齢は、設定では76歳だったはず。高齢になっても衰えない男性の性欲が、嘲笑の的です。

老人の服装は、戦後に流行した格子柄のダブルのジャケットにタートルネック。若かった当時のファッションを未だにカッコイイと思い、そのまま感性の時を止めてしまった男性の愚かさ。

長髪ですので、元デザイナーか何かなのかもしれません。デザイナーでも自分のファッションは頑なに同じものを貫き通すような頑固な老人、いらっしゃいますね。

九州の大分という田舎から出てきて、クリエイターとしてそれなりに成功したものの、都心には住めず、東京郊外に落ち着いて余生を過ごしている……そんな背景が想像できます。または定年退職した後、会社勤めでは出来ない若い頃に憧れたファッションに変えたのかも。いわゆる「定年デビュー」です。

人々は、落ち目の男性が女性を口説く老醜をまず嘲笑するのでしょう。そして、実はダッチワイフを相手に寂しさを紛らわせていたという、もっとむごたらしい現実を見て、さらに残酷に笑うのです。

よく出来ています。

先日日本テレビの24時間テレビで、小林旭が日本エレキテル連合のネタを無視したと報じられていました。

★ 日本エレキテル連合を、ガン無視! 『24時間テレビ』の小林旭の態度に物議。
するとやっとチラリと日本エレキテル連合の方に視線を移したが、やはり無言のまま。この一連の行動がよほどインパクトがあったのか、ツイッターでは「小林旭、日本エレキテル連合をガン無視」というつぶやきが溢れ出したのだ。
小林旭には、笑えなかったのではないでしょうか。彼が笑われる対象である、老人だから。

高齢化社会となり、老人が街にあふれています。昔に比べれば栄養状態もよく、身体は健康であり、性欲も衰えません。ところが社会には未だ老人の性をタブー視する風潮があります。翁たちは、後ろめたい気持ちを抱きながら女性を口説かざるを得ません。そんな自分たちの姿を、若い女性に嘲笑されたと往年のスーパースターである小林旭がとらえたら、笑えるわけはありません。

でも、これは単なる嘲笑とは思いません。日本人の受容の過程ではないかとも思うのです。

日本エレキテル連合のネタを観てすぐに連想したのは、鳥居みゆきでした。彼女の登場もまた、衝撃的でした。

上記の動画は、たぶん彼女の登場の初期のものだと思います。彼女を笑っていいのかどうしようか、迷っているタレントたちの表情が印象的です。

私もそうでした。彼女のネタを初めて観た時に、
「精神異常者を笑っていいのだろうか?」
と、躊躇ったものです。

彼女の登場は今となって分かりますが、時代の変わり目を表わしていたように思えます。

精神異常、特に統合失調症について語ることさえタブーだった時代がありました。昔は、あまりに深刻なので、笑いの対象にすることはできなかったのです。親族に統合失調症患者が出ると、精神病院に押しこめ、親族中で必死に隠しました。

しかし、全人口の1%が罹患する、決して珍しい症状ではないこと、薬である程度抑えられるものであることが分かってきました。罹患者が情報発信をするようになり、決して恐ろしいものではないことなども明らかになってきました。

人間は恐怖を感じると、笑ってごまかそうとします。

★ なぜ人は恐怖を感じた時に笑ってしまうのか?
人間の恐怖による笑顔の可能性はもう一つ考えられます。おそらく、私たちは、自分たちが危機的状況に陥っているということを認めない可能性があります。自分は危なく無いと、激しく否定しようとして笑いが出てくると考えられるのです。
タブーを否定するために、笑う……別の表現で言い換えましょう。タブーとされてきたことを受容する過程で、人は笑うことが必要なのです。

日本エレキテル連合のネタが人々に受け入れられ、共有されていったのは、日本人の中に、高齢化社会で否応なく向き合わざるをえない老人の性の問題を受け入れる体制が整ったことを示しているのかもしれません。

これから、老人の恋愛、性処理などがもっと大きな声で語られるようになるのかもしれません。そうだとしたならば、まさにエポックメイキングなネタと言えましょう。

こうしたことを意識的にやっているのか、無意識的にやっているのか?

私は、意識的に仕掛けているのではないかと疑っています。と言いますのも、日本エレキテル連合のネタ作りを担当する中野聡子は、お笑いへの思い入れが強く、かなりの勉強家で、大変な野心の持ち主であるからです。

インタビューで、彼女の憧れは志村けんであり、ドリフの作り上げた世界観を継承していくことが自分の目標だと発言しています。
 

現実に欠けた理想のピースを思い描き、それを自分で作り上げていきたいという目標を掲げる女性は、珍しいですね。それにしても日本中で愛されたドリフの世界を再度蘇らせようという野望を口にすることは、大変勇気が必要です。

若いころにありがちですよね。私ならやれるって。でもこういう人、私は嫌いじゃありません。

また、彼女たちが最近、自分たちのネタを詰め込んだDVDを発売しました。このタイトルが凄い。「腹腹電気」です。

「お客さんにハラハラして欲しいから」
とタイトルの理由を白々しく語っていますが、そんな訳ありません。

間違いなくこれは、三菱重工など企業の連続爆破事件を起こした極左グループ「東アジア反日武装戦線・狼」が地下出版した、爆弾の製造法やゲリラ戦法などを記したマニュアル『腹腹時計』を意識したタイトルでしょう。

こうした昔のネタを若い彼女が知っているところをみますと、相当の勉強家だと思われます。

あまり受け答えはうまくありませんし、即興のコメントも苦手な様子。一発屋的な臭いも多少しなくもないですが、例えば映画監督や落ち着いた番組の司会などで才能を発揮するタイプかもしれません。


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