2014年7月27日日曜日

楽天の若きエース・北川拓也氏の簡単なまとめ

北川拓也という人物に興味を持ちまして、昨日から彼について書かれた記事をいくつか読みました。
「ハーバード大学って、どうやって入るの?」より
彼の名前で検索すれば、すぐに、彼が書いていたブログだとかフェイスブックに行き当たることができるでしょう。ただ、ブログは二年前から更新されていませんし、ほとんどの人は忙しいでしょうから、彼の人となりをすぐに知ろうとしても、難しいと思われます。

そこで、最近急に北川氏に興味をもった方々のために、彼の考え方やについて、簡単にまとめてみました。


彼のプロフィール

北川拓也氏のプロフィールを、簡単にご紹介しましょう。

  • 1985年生まれ。
  • 灘高校時代に化学オリンピックの国内最優秀賞受賞。
  • ハーバード大学で数学、物理学を専攻、両学士課程で最優等の成績を取得。
  • 2013年にハーバード大学院博士課程修了。
  • 現在、楽天株式会社執行役員かつビヘイビアインサイトストラテジー室室長。


優秀なキャリアですね。

灘高から東大を経由せずに直接ハーバード大学に入学したことで、彼の行動が、
「優秀な学生の新しい生き方」
として、以前から注目されていたようです。そういえば、彼の名前を10年近く前にテレビで見かけたことがあるような記憶がありますが、これは私の勘違いかも。

優秀な人間は、ときに企業にとっては格好の看板となります。ノーベル賞を受賞した田中耕一氏が、島津製作所の研究レベルを担保しているようなもの。北川拓也のような優秀な人材がいる企業として、知的ブランドが一気に上がります。

彼を手に入れようと多くの企業が働きかけたようですが、北川氏を最終的に獲得したのは「楽天」でした。

なぜでしょう?

好きなことを研究できそうだったから

高校生の頃は、「『僕は』何のためにこれを勉強しているんだっけ」ということを、ずっと考えていました。たとえば、ニュートン力学のテコの原理でモノが動く、ということが「僕にとって」何が嬉しいんだっけ?と考えるわけです。
特定の物事にこだわるのではなく、全体的な関係性の中で解決しようとする癖が子供の頃から彼にはあったのですが、同時に、常に「自分にとってそれがどういう意味を持つのか」という主観を大切にしてきたと言います。

科学的合理性を備えた自己愛者、といったところでしょうか。

日本は経済的にはすでに発展しきっていますが、それでも幸せの実感値が低い国です。(中略)とすれば、幸せを「ものの見方や捉え方、価値観」といったものだけで変えられる可能性があるということです。
具体論でいうと、「通勤時間を短くすること」「家の中を静かにすること」「1日10分、死について考えること」「1日1回、人に親切にすること」といったことが、人間の日常の幸福感に直結することが知られています。
人間の幸せを考えるときに、日常生活の中でどういうスイッチを押せば幸せになるのかをできるだけ理解したうえで、取り組みたいと思っているのです。
彼にとって関心があるのは、まず「自分」。しかし、自分が「楽しい」と思う理由を説明するためには、自分だけを研究しても意味はなく、客観的な視点が必要だと考えた彼は、「幸せ」という抽象的な概念を、客観的視点から探求することにしたのでした。

そして、「幸せ」の出発点である「人のEmotion(感情)」を研究したいと思って、楽天へ就職したのだそうです。

もっともそれは彼の関心の一部分であり、その先には、金融政策を扱うマクロ経済と、消費行動を扱うミクロ経済学をつなぐ「ミディアム経済学」の研究や、普遍的なものと個別具体的なものをつなげる理論を見出すことが目的であるとしています。


それにしても、普遍化・抽象化と個別具体的事象との橋渡しなんぞ、「東洋と西洋の橋渡しをしたい」と語る文学者の夢と同じくらい、手垢のついた理念ではありませんか。誰もが考えつつ、それを成し遂げたとして有名になった人は少ないものですが。


実際に彼が楽天で具体的に行っている研究とはどのようなものでしょう? 彼の茫洋した理念とは異なり、結構具体的なもののようです。
数学を使い、過去のデータから「この人はこんなことに興味がある」という相関や「あの人はバナー広告をよくクリックする」といった傾向を見出し、表現していくわけです。
楽天のトップページには1日200万人くらいの来訪者がいますが、かりに全員へ同じようにミネラルウォーターの広告を見せても、興味を持つ人は全体の2%くらいしかいません。ということは残りの98%はまったく無駄になっているわけで、その分をマッチングできれば非常に成果が上がるようになります。 
わかりやすい例をあげると、同じ商品が100円から200円に値上がりした場合と、6000円から6100円に値上がりした場合を比べてみてください。どちらも値上がりした金額は100円で同じですが、感じ方は大きく異なるでしょう。人間は物の値段を「倍々」で感じていると言われていて、この見方に基づけば100円の商品が200円になったときと同じ感じ方をするのは6000円の商品が1万2000円になったときです。
この「人は値段を倍々で感じる」というのが解釈で、購買データの分布1つをとってもそこに解釈を与えることで「こんな動きになっているのは、こういう理屈があるからなんだ」と物の値段への感覚値が垣間(かいま)見えてきて、人間の購買の仕方が明らかになってきます。
顧客のそれぞれの興味に合わせて、これから顧客が興味を持ちそうな情報を予測してカスタマイズされた画面を、個々に提供する、というもののようです。

思った以上に、具体的な研究ですね。インターフェイス研究といったところでしょうか。そこで、「インターフェイス 北川拓也」で調べたところ、次の書籍が見つかりました。彼が共同著者の1人なのかも。

随分強気の値段設定でびっくり。

マッキンゼーが、経営戦略立案をルーチン化して、新卒生でも経営コンサルタントとなるパッケージをつくったように、楽天に出店している4万4000の店舗の店主ならだれでもが、消費行動を促すウェブデザインを構築できるパッケージを作るのが彼の目的なのだそうです。



それにしても、「物理学者」という社会的にステイタスの高い立場から、IT企業のインターフェース研究者という場所に降り立って、後悔はしていないのか?
物理学って、いい意味でも悪い意味でも非常に成熟した学問です。明確に考えたわけではないですが、この時代における物理は存分に楽しめた、という思いがあったんだと思います。同時にニュートンが活躍していたような黎明期の発見の喜びというのに憧れるところもありました。
(中略)
実際に飛び込んでみると、やはり知的刺激にあふれた世界でした。発見できるものの量が全く違うんです。
後悔はしていないようです。社会的地位よりも、自分の価値観を優先するタイプなのでしょう。


「行動変容」から「意識変容」へ

彼は、ネットを利用する人間の行動をどう考えていくか、という「行動変容」にフォーカスすると同時に、「行動変容」によって購買行動を変化させた結果、「意識変容」もさせうる、つまり楽天が人々の意識を変化させ得るのではないか、と考えているご様子。……なかなか危険です。

とはいえ政治的なものには今のところ関心はなく、あくまで電子商取引業社の社員としての役割にとどまりたい模様でして、それ以上の目的は口にしていません。


モノを買ったから幸せになるのではなく、モノを買ううちに、意識が変わり、価値観が変わり、幸せになる……そういう幸せを意識的に行い、顧客を満足させたい、とのこと。
プラットフォームで勝ちに行く事業者は、それより下のレイヤーでプラットフォームが変わったときに乗り換えられてしまうんですよ。今なら具体的には、PCからスマホへのシフトですよね。だからこそ、もっと本質的なレベルで「売買」とは何かを問う戦いに持ち込む必要があるんだと思います。
なるほど。彼の考え方が分かってきたような気がします。

楽天の画面構成を変えて、顧客に消費行動を促すサイト作りにとどまらず、
「楽天で物を買いたい。たとえパソコンからスマフォに変わっても、スマフォから他の媒体にツールが変わっても、私は楽天のファンで在り続けたい」
というファンづくりこそ、彼の目標とするところなのではないでしょうか。

(私、ちょうどそういうテーマに沿った電子書籍を作っていたところなので、嬉しくなりました……それはまた別の話ですが)。





しかし実際の研究よりも、啓蒙活動の方で忙しいのかもしれないと思ったのは、下記の記事を読んでから。

★ 北川拓也氏×Tehu氏が語る、これからの教育で必要な3つの力

灘高の文化祭で女装してももいろクローバーのダンスを踊った灘高性が話題になりました。本格的ですね。

この、なだクロを企画したTehu氏と、北川氏が対談をしています。
結局、リーダーシップは物事を成し遂げる力なので手段を問わないというのは非常に大事。目標を選ばずに、やるべきことを全て成し遂げていく力を持つことが、ハーバードに行って重要なことだと学んだ。
内容としては、やや陳腐。自己啓発本に書かれていることをなぞっているだけのように思います。彼の言葉に含蓄が生まれるためには、経験と実績がまだ不足しているように思えます。



以上、まとめますと、これまでの研究者としての経歴には文句なく、理論物理学について相当の研究をされている方のようですが、楽天で行っている研究の全体像は今ひとつ明らかにならず、彼のキャラクターも、今ひとつパッとしないな、という印象です。

楽天は彼を執行役員にして、何を狙っているのでしょう?

知名度を上げるために、茂木健一郎と対談を行わせたり、人生を語らせたり。

どうも楽天は、彼に研究者としての成果を求めているのではなく、裏に広告代理店をつけて楽天の「看板」として売りだそうとすることに熱心なのではないのか、とも思えるのです。



人寄せパンダか?

人寄せパンダというと語弊がありますが……。彼の研究自体よりも、楽天に欠けている、
「テクノロジーによって現実をより良いものへ変える、革新的な企業」
という、IT企業としてのイメージを彼が体現することを楽天は求めているのかも。

しかし、彼自身にはIT技術者としての蓄積も実績もありません。

理論物理学者としては頭のいい方なのでしょうが、インターネットへの愛がないため、EC企業の社員としては、言動が上滑りしている……彼の現状に、そのような印象を受けました。




人々の嗜好に合わせたインターフェイスを作るのはとても難しいことなのでしょう。結婚している方、妊娠している方、二股をしている方、不倫をしている方、浮気をしている方、愛人を作っている方、2ちゃんねるに入り浸っている方、7人の恋人を抱えている方、twitterをやっている人などなど。いろいろな人々に合わせた入り口を作ろうとする、彼の努力に、これからも期待をしてやみません。

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