2014年6月20日金曜日

チャンスは営業活動でつかめ

武井壮という芸人がいるのですが、彼の芸能界入りのきっかけについて、これまでこう説明されていました。

★ 武井壮を見出した男、ピエール瀧が出会いを語る。
 3月1日深夜放送の『くせになるややこしさ ブラックマヨネーズのハテナの缶詰』(読売テレビ)にゲスト出演した武井壮。彼がテレビのバラエティ番組へ出演することができたのは、ピエール瀧の口添えがあったからだという。
 出会った場所は、ピエールが行きつけの西麻布のバーだった。そのお洒落なバーのカウンターで、普段は見かけない男が座らずに立っていた。気になったピエールは遠目から観察していると、その男は左手に牛乳らしき白い液体が入ったグラスを持ち、右手に持っている何かに噛りついていた。その男こそ、武井壮であった。
私はこの話を額面通りに信じておりまして、偶然の出会いの大きさに感動したものです。人と人との出会いはどこに転がっているかわからない。幸運を手にしたのに手放す人もいる。しかし、ご縁を大切にしてブレイクすることもある。運命とは分からないものだ……。

ところが、実態はどうやら異なっていたようです。

 兄が目指した世界と、自分のできること、その融合ができないものかと。漠然とあった、そういう思いの導きをしてくれたのも、彼らでした。
 その日から、オーディションに行ったり、芸人さんがたくさん来られる西麻布のバーに通い詰めたり、スポーツと芸能という両方の要素がある欽ちゃん球団(茨城ゴールデンゴールズ)に入ったり。
つまりは、「営業」だったわけです。偶然の出会いなどでもなんでもなく、芸能関係者がたむろするところで、ひたすら奇行をおこない、デビューのきっかけを待つ、という待ち伏せ型のハンターだったのです。

考えてみれば、デビューという人生の転機を、美談で語ろうというのは世の常ですし、どういう話が世間に求められているかを考えれば、
「出会いは偶然だった」
という話をするのが一番かしこい方法です。

結婚のきっかけを、
「偶然の出会いでした」
と語るのと、

「理想の相手の条件をリストアップ、条件にあった人物が出没する可能性のある場所に退社後の2時間待機して、容貌の点で満点だった10人を選択、それぞれの後をつけて居住地を確認したのち、数週間張り込み、彼女たちの日常を記録。彼女たちの行きつけの場所で話しかけても良さそうなところで事前に待機して、声をかけたことが出会いのきっかけです」
と語るのとでは、他人に与える印象がまったく異なります。

人間(特に女性には)、運命を信じたがるもの。出会いが意図的なものを嫌います。

こうして考えますと、
「原宿で偶然スカウトされました」
などという話のほとんどは眉唾なのかもしれません。

そういえば、タモリにも同じような偶然のデビューのエピソードが語られていました。
(タモリは)1972年、渡辺貞夫の福岡でのコンサートのスタッフに大学時代のジャズ仲間がいたことから、コンサート終了後、その友人が泊まっていたホテルで終電がなくなる時間ギリギリまで飲みながら話し込んでいた。いざ帰ろうと部屋から出た際、やけに騒がしい一室があり、通りがかり様に半開きになっていたドアから中を覗いた。室内では、ナベサダのコンサートに同行していた、山下洋輔トリオ(山下洋輔、中村誠一、森山威男)が歌舞伎の踊り、狂言、虚無僧ごっこなど乱痴気騒ぎをしていた。そこにタモリは乱入する。中村誠一が被っていたゴミ箱を取り上げるとそれを鼓にして歌舞伎の舞を踊り始めた。山下トリオの面々は「誰だこいつ?」と動揺するが、中村は機転を利かせてその非礼をデタラメ朝鮮語でなじった。しかし、タモリはそれより上手なデタラメ朝鮮語で切り返し、その後、タモリと中村のデタラメ外国語の応酬が始まる。タモリが表情を付けてデタラメなアフリカ語を話し始めた際には、山下は呼吸困難になるほど笑ったという。始発が出る時間まで共に騒ぎ、タモリは「モリタです」とだけ名乗って帰宅した。
「この男はジャズ・ファンに違いない」と確信した山下は、博多のジャズバーに「モリタ」という名前の男はいないかと片っ端から問い合わせたという。
これもまた、同じなのかもしれません。せっかく芸能界を夢見て学生時代に東京に出て、大学学生バンドをやったりしていたと、Wikipediaには書かれています。このときには巨泉も大絶賛していたようですが、彼の芸風にスポットライトが当たることはなく、タモリはそのまま故郷にとぼとぼと帰るしかありませんでした。

在学中にはチャンスをつかめなかったタモリが、チャンスを手に入れるために、九州にやって来た芸能人に、かたっぱしからアプローチをしていた、ということだって考えられます。JAZZ界の大御所の前で披露した芸は、タモリが友人との間で練りに練った、渾身の営業活動だったのではないかと、今になって思うのです。

もちろん、一発屋と言われる人はいますから、運でのし上がった人もいるでしょうが、それでは後が続きません。実力でもぎ取ったものではないから、再現性がないのです。

努力嫌いの人にかぎって、運だけで成功したような人を見て、自分も出来る、と思いがち。でも、
「運だけで成功した」
と語る人が本当に運だけで成功したのか、検証する必要があります。

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