2014年6月1日日曜日

対処療法は根本的な解決をはばむ――セウォル号オーナー一族からの財産没収検討

韓国のセウォル号沈没事件の余波は、いまだとどまることを知りませんが、先日気になるニュースが飛び込んできました。

★ 会長一族の全財産240億円没収へ 検察、不法利得と認定
 韓国旅客船セウォル号沈没事故で韓国検察は29日までに運航会社、清海鎮海運会長の兪炳彦容疑者=背任容疑などで指名手配中=と家族ら3人が持つとみられる財産総額約2400億ウォン(約239億円)を背任や横領による不法利得と見なし、刑事責任を問う形で全額没収する方針を決めた。
私が高校生の頃だったでしょうか。夜、ラーメンを食べていると、逮捕された盧泰愚元大統領の囚人服姿がテレビに映り、それを観ていた隣のサラリーマンが、
「韓国はすごいな。大統領が逮捕されるんだからな。しっかりしているよ」
と、同僚に話をしていたシーンが、深く記憶に残っています。

私を含む多くの日本人もそう思ったでしょう。田中角栄が収賄容疑で起訴されながら、収監されないのに比べると、潔いなと感じました。

ところが、今回のこのニュースを聞いても、スカッとするのは一瞬だけ。富豪一族の全財産を没収しても問題解決につながらならないことは、大統領を逮捕し続ける韓国の現状を知りますとよく分かります。同じ過ちがまた、繰り返されるのではないでしょうか。

韓国は中国王朝の政治風土の影響を強く受けました。中国では、科挙で選ばれた官吏が領民から賄賂を受けるのはおかしなことではありません。もちろん公式には否定されています。しかし、日本で速度制限が60キロでも10キロオーバー程度なら許されたり、麻雀屋で賭け麻雀が黙認されているようなもので、賄賂による蓄財は、当然の権利だというのが中国の政治風土です。

そして、一人が官吏になれば、一族郎党はそのおこぼれを預かります。当然の権利であり、官吏になった人間にとっては、親戚縁者の世話をするのが義務です。

本来ならば禁止されていることが堂々と行われ、当局はそれを半ば黙認している……この曖昧さが、儒教文化圏では政治の安定を生んできました。

……というのは、誰もが何かしらの法律違反をしているので、もしも当局に反抗的な態度を取ったのならば、これまでお目こぼしされていた法律違反を検挙するだけでいいからです。ですから、時の政権に誰も強硬な態度は取れず、だらだらとした改善のみが行われることとなります。

こうして溜まった膿を、事件が起こるたびに吸い出すのは、単なる対処方法で、根本治療になりません。膿ができるたびに、おできをメスで切り取るのは爽快でしょうが、根本治療を行わなければ、再び皮膚に疾患が出てくるでしょう。それを防ぐためには運動したり生活習慣を見直したりすることが人間にとって必要なのと同じように、社会にとっても教育制度を含めたシステム全体の改善が必要なのは、論を待たないところです。

ではどうするか?

その解決方法はすでに明らかになっています。法治主義により、人間の恣意的な判断を極力排除していくことです。法治主義には形式主義にとらわれて正義が無視される、という危険性もありますが、社会をよりよくしていくために、規則を明示化し、それを誰もが守るように社会全体で努力を積み重ねていくことは、恣意的な行政よりも社会全体の幸福度が上がる方法なのは明らかです。

その観点からしますと、今回のように、過去の不正蓄財の可能性を理由に財産没収するなどの方法は下策といえます。誤った社会システムが温存されるだけでなく、そこでスカッとしてしまい、今後の、何年にも渡る継続的な改革へのエネルギーが奪われてしまうからです。

韓国は、日本との政治軋轢を理由に、対馬で数百年もの間祀られていた仏像を未だに返還せず、それを当然のことだとして自国民の溜飲を下げさせています。このポピュリズムの行き着く先が、度重なる最高指導者周辺の違法行為であり、大規模災害時の不手際となります。

スカッとするのは小説やスポーツの中だけの話であり、現実でスカッとするようなものには、なにかおかしなところがあると、考えた方がいいでしょう。

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