2014年4月11日金曜日

新人がミスを連発するのは、会社側に問題がある

4月も半ばとなりました。この時期になりますと、新入社員を受け入れた側のボヤキが聞くことがあります。

そんなとき私は、
「それは大変だねぇ」
などと同調して見せるのですが、内心では新入社員に同情を寄せるのです。

何故なら、多くの場合、受け入れ側の指導力不足が、新入社員との軋轢を生んでいることがほとんどだからです。

受け入れ側の愚痴としてよく聞くのが、
「新入社員には、分からないことがあれば尋ねるように言っているのに、尋ねてこない。尋ねてきても見当違いのことばかり言う」
「分かっていないくせに『分かりました』という空元気だけは一人前だ」
というもの。

つまり、知らないことを訊かないのは怠慢だし、知らないのに知っているふりをするところが不誠実だ、という訳です。

本当に、バカですね。何が分かっていて何が分からないのか、分からないから新人は間違うのです。彼らがそれで悩んでいるというのに、それを理解できない人、昔自分もそうだったことを記憶していない人が、あまりに多すぎます。

図解してみましょう。
上半分の白い部分が、会社で為すべきこと、正しいこと、素早い処理方法などなど。
下半分の黒い部分が、会社で絶対にヤってはいけないこと、間違っていること、時間ばかりかかる誤った方法などなど。

会社に数年いるうちに学んだ知識が上の円の中身だとしたら、新入社員の知識は小さいので、その内の一部分だけとなり、下表のようになります。

新入社員の知識である内側の円(内円)は、小さいだけではなく傾いています。彼らが正しいと思っていることの一部は誤っていますし、彼らは正解の一部を間違っていると思いこんでいるのです。

ところが、内円と外側の円(外円)とは不透明な壁で区切られており、外側からは内側の様子が分かりませんし、内側からは、外側の広さも傾きも、分からないのです。

見えない手探り状態で、
「分からないことは尋ねなさい」
と言われても戸惑うだけ。そもそも、間違いが何か分かっていれば、自分で修正できますよ。

では、どうするか。

指導力のある人物ならば、不透明な壁越しですら、中の様子を的確に把握できることでしょう。新人が何に迷っているのかをつかみ、少ない知識でもミスを繰り返さないように、内円を操縦することができるのです。

でも、現実には、仕事の能力はあっても教育する能力はないことがほとんど。仕事能力が下手にあるものだから、指導力が自分にないかもしれないという可能性に思い至らず、新入社員がミスをするたびに、ガミガミと怒り、それが指導だと思い込むのです。

それは、下表のうち、AとBによって生ずるミスを、発見しては取り除くという地道な作業です。

先輩社員にとっては、仕事をしているような気になりますが、ブラックボックスの内部構造を把握しようとせずに出力されたデータに一喜一憂するという、大変無駄な方法です。受け入れ側は自分たちが頑張っていると思い込み、新人はひたすらストレスがたまるという、お互いにとって不幸な方法です。

結局のところ、ブラックボックスである内円からAとBを取り除くという作業はうまくいかず、数年から数ヶ月後に内円が拡大するうちに内円と外円を隔てていた壁が薄くなり、やがて消え、新人の戸惑いはようやく収束することになります。


それを周囲は自分の指導力のお陰だと勘違いし、誤った指導法の再生産が行われていくのです。

指導力のある優秀な人材が社内にいなくても、内円の傾きのズレを、手早く修正する別の方法が、あります。

それは、ルーチンワークを定め、まずはそれだけを、徹底的に叩き込む、それ以外は覚えさせない、というものです。

一般的な会社の仕事というのは、8割がルーチンワークであり、2割がイレギュラーな仕事となります。新人にとって、この区別が大変難しいのです。どれが「よくあること」でどれが「滅多にないこと」なのか分かりません。

ところが、教える側は、「ルーチンワークはいずれ覚えるだろう」と思っているために、あまり身を入れて教えません。逆に、イレギュラーなことがあると、
「滅多にないからこそ、この機会に教えておかなくては」
と思って、一生懸命に教えようとします。

でも、これは逆効果です。知識を修得するまでは、ある程度の時間も労力もかかります。覚えては忘れ、また覚えることの繰り返しです。

だから新人には、まず、完全に身につけておかなくてならない基本的なことだけをひたすら覚えさせます。身体に叩き込むのです。

図で言えば、CとDを完全に叩きこむということでしょうか。

Bには絶対にやるべきことであるCの一部が紛れ込んでいますし、Aには絶対にやってはいけないことであるDの一部が紛れ込んでいるので、それだけを、徹底的に正しい位置へ変えてしまうのです。

そして、それ以外のイレギュラーなことについては、今は覚えなくてもいいよと捨てさせます。ノートを取らせはするものの、覚えなくても失敗しても決して叱ってはなりません。あくまでイレギュラーなことであり、今はまだ覚えなくてもいいことを強調し、新人を安心させます。CとDを完全に叩きこむことを、何よりも優先するのですね。これが遠回りのようで、即戦力のある新人を即成する一番の方法でしょう。

ルーチンワークはコンパクトなマニュアルとし、それ以外のイレギュラーなことについては周りが徹底的にフォローする、というのは、考えてみれば至極当然のことです。しっかりした会社ではどこもやっています。大手はその点、しっかりしているところが多いです。

残念なことに、中小企業にはこういう当たり前のことが分かっていない人々が、あまりに多く、覚えの悪い新人をバカにして愚痴を垂れます。こうして多くの新入社員が周りの理解を得られず、潰されていきます。

新人が「分からない」ことが分からないのは当たり前。それを把握出来なければ、自分たちの能力不足だと考えて、せめて、徹底的に今の仕事の基本的な部分をマニュアル化するという作業をするなど、是非自分たちのあり方を改めて欲しい、と思う次第です。

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