2013年10月29日火曜日

共感力欠如は脳の構造変化? だったらホリエモンは?

権力者が傲慢になるのは、権力者自身の考え方の問題ではなくて、脳の構造変化が原因だという研究結果がカナダの大学から発表された。

★ 「権力者の傲慢」は脳の仕組みに起因? カナダ研究
しかし今回の研究で、人が権力を持つと、脳が本来的に持っているメカニズムによってこの共感の仕組みが機能しなくなることが判明したという。
"共感"する力とはいったいなんだろうか? 上記の記事によれば、他者の感覚を共有する、脳に備わった能力のことだという。
過去の研究では、サルや人には、自分が物をつかもうとしている時と、他者が物をつかもうとしているのを見ている時とで脳が同じような反応をする共感の仕組みがあることが分かっている。

孟子の惻隠の情
この研究結果を知って考えたのは、今から2300年前の中国の哲学者・孟子が唱えた性善説のことだ。孟子は、人間には必ず「惻隠の情」というものが備わっている、だから人間の心の本質は「善」である、と考えて「性善説」を唱えた。
人皆な人に忍びざるの心有りと謂ふは、今人たちまち孺子の将に井に入らんとするを見れば、皆な怵惕たる惻隠の心有るが所以なり。
(人間に「忍びざるの心」が有ると言えるのは、幼児が井戸に入らんとするのを見れば、心配して気遣い、惻隠の心が自然と生じるからである)
見た対象の危険を自分のものとしてとらえ、そこから「助けなければいけない」と思う人間の気持ちが、善の発端であると孟子は説いたわけである。子供が井戸に落ちそうになる時にハッとなる心の動きは、親の気持ちに共感するというよりも、落ちようとする子供の気持ちに共感するものだろう。よって、共感力が善性を生み出す、とも言えるように思う。


『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
「共感」が人間を人間たらしめるものと説いた小説もある。

著者のフィリップ・K・ディックは、人間と区別できないほどに進化したアンドロイドと人間を区別する唯一の手段が「共感力」の有無だと定義した。この考え方は多くの人に支持された。この小説は『ブレードランナー』という映画となり、日本のアニメにも多大な影響を与えている。

では、なぜこれほどまで必要な「共感力」を、権力を握った人は失ってしまうのだろうか?


堀江貴文は共感力がない
このことを考える際に参考となるのは、堀江貴文の存在だ。

★ 人生を変える劇薬 「アドラー心理学」がいまの日本に必要なワケ
 柿内 たしかにそれはありますが、連載を読んでもらえれば、その弱点はすべて解消されていることがおわかり頂けると思いますよ。そういえば、いま僕は堀江貴文さんの単行本(『ゼロ』)の編集をしているんですが、堀江貴文さんって、アドラー的な考え方を地でいっている人だと思っていて。たとえば、彼は東大時代に先輩とケンカして、「おまえは他人の気持ちがわからないのか!」と怒鳴られたそうなんですね。そこで堀江さんが言ったひと言が最高で。

 吉田 へえ、なんなんですか?

 柿内 「他人の気持ちなんて、わかるはずがないじゃないですか!!」ですよ。これはシンプルですが、世界の本質を見事に突いたひと言です。そして、とてもアドラー的。
堀江氏は「他人の気持ちを推し量ることはできない」という強い信念を持っている。本来だったら人間は必ず持っているはずの共感力が彼にはない。そんな彼には多くの崇拝者がいる。有料メルマガを発行しているが、購入者は10万人に上る。

女性にとっては、自分の言うことを聞かずに暴力をふるうような、いわゆる「オラオラ系」が昔から人気だ。あれも共感力を持たない人間の魅力だろう。


脳は進化の過程で変化した
共感力のない人間に、人々が魅力を感じ、時に指導者として崇め奉るのはなぜだろう? 

答えは簡単だ。人類の脳が進化の過程で、この仕組を取り入れたからだ。人間の脳の仕組みがそうなっているということは、人類が数百万年かけて、脳がそのように機能するように進化してきたからだ。

人類は、数百万年の間、共同体の構成員には共感力を必要とし、共感力のない人間をリーダーとして求めてきたのだ。

このことは、猿の群れがてんでバラバラに活動するよりも、協同する方が何事もうまくいくのを想像すればわかりやすいだろう。共感力が高い群れは、同調もたやすい。その結果、群れの結束力は高くなる。団結力の有る群れの生存率が高くなるだろう。

ところが、ボス猿は群れの猿と同じことをしていてはいけない。群れを安全な場所に連れて行ったり、群れを逃して自分は敵と戦ったり、新天地を目指して群れを率いたり……他の猿とは違うことを考える必要がある。そのためには、共感力を封印する必要がある。

つまり、脳が共感力を持っているのも、権力者がそれを失うのも、人類が生き残るために必要だったということだ。共感力が善悪を判断するための源泉だとしたら、共感力を失うことにより、善悪の基準を自ら創りだす能力を獲得する、とも言えるかもしれない。

低い能力の人間が共感力すらなければ、群れから追い出されてしまうが、高い能力の人間にはリーダーとなってもらい、さらには共感力を封印して、群れとは別個の視点で状況判断してもらった方がいい。


時代は変化した
だが、残念ながら、今では時代が違う。原始時代だったらともかく、現代社会は高度に発達している。人類全体で、善悪の基準がある程度共有化されている。もはやその基準から逸脱することは許されない。

ところが、数百万年かけて獲得した脳の機能のお陰で、共感力を失った指導者たちは、それゆえに多くの支持者には恵まれるものの、社会のルールから逸脱する道を安易に選び、その結果あっという間に没落してしまう。

先日取り上げた徳洲会のケースもこれに当たるかもしれない。何より先述の堀江貴文の一連の騒動が記憶に新しい。

進化の過程で、人間の脳は多くの機能を有するに至ったが、その中には現代社会にとってはそぐわないものも多い。その一つが権力者の脳から共感力が失われる、という仕組みではないか。

それを避けるために、権力者となった本人が自覚をして、理性によって脳をコントロールしていく必要があるのだろう。

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