2013年8月10日土曜日

先輩の言葉に耳を傾けろというが

ビジネス書花盛りである。時代時代によって流行となる分野は異なるもので、ある時は歴史物が棚を独占していたし、別のあるときはオカルトや占い物が大人気となっていた時代もあった。そして今はビジネス書なのだそうだ。

もう少し若い頃、20代の頃にはこの手の書物を読んで他人よりも人間的な知恵を身につけた気がしたものだが、今では著者の独善ぶりが鼻につくことが多い。

その中に「先輩や上司の言葉にとりあえず耳を傾けろ」というものがある。新入社員時代には、先輩や上司の言うことが不合理にしか思えず、反発ばかりを感じることがある。ところがそれから数年経つと、彼らの不合理な指示の意味が分かってくる。だから、最初は不合理だと思っていても彼らの言うことにはできる限り従った方がいい、というものだ。

ところが、先輩や上司が必ずしも人間的に優れているとも限らない。中には本当に、根っから部下が失敗するのがうれしくてたまらないという嗜虐的な人間がいるのである。

この手の人間がたまたま上に来なかった作者が、
「先輩の言うことにとりあえず耳を傾けろ」
などと世迷い事を言う。

北野武監督の『キッズリターン』でも、先輩の言うことに耳を傾けて、試合の前に減量をサボったり、やせ薬を飲んだりした青年が夢を潰されていたではないか。ああいうことは日常的に起こっている。私の周りでも、バカな人間が上にいたためにつぶされてしまった人間の屍はいくつも見てきた。

そういえば昔、斉藤一人という大金持ちがいて、人生論を多々語っていた。彼の本もビジネス書としてよく売れていた。今でも彼の本は、時々売れ筋本の中に顔を出す。

この斉藤氏、かつて、
「親孝行をしなさい。子供を嫌いな親なんていないんだよ。子供を愛さない親は、この世界に一人もいないんだから」
と熱く語っていた。彼の親は仕事熱心で、働かない父親の代わりに女で一人で子供を養っていたという。その彼の経験から、子を思う親の気持ちは信念となっていたのだろうが、所詮彼一人の狭い世界の出来事で、子供の虐待の話が大きな話題となるにつれて、自分の狭い見識を悟ったのだろう、子を虐待する親もいることを前提とした語りへと変わっていった。そんなものである。

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