2013年5月18日土曜日

みんな嘘つき 上

社会人経験のない学生や主婦がよく騙されやすいのが、テレビなどに出る人が本当のことを言っていると思い込んでいることにある。

先日、喫茶店で座っていた私の横で、出版社勤務と思しき2人の編集者がどうやって本を作るかを話し始めたのだが、
「この作者(どうやら医者らしい)には、あまり語れることがないから、今度この本を貸そうと思う」
「あのエピソードの解釈に、この本のここの記述が使えないか、今度相談しようよ」
と話し合っている。

以前本を出したことで話題となったサッカー選手の主治医の本らしいのだが、彼の思想はシンプルで、それほど難しいものでもないらしい。一冊の本になるよう水増しするために、その主治医が語ってもいない内容を増やすのならば、そりゃ半分詐欺だと思いながら、こちとら閉口したものだが、

(そんな内密の話は社内でやれよ)

と、思いつつも、隣にいるから耳をふさぐこともできない。多分彼女たちにとってみれば、特段隠すようなことでもないのだろう。

★ 松下幸之助、稲盛和夫…成功者のエピソードには嘘が多い?成功は偶然、事業計画書は嘘…

という記事では、世の中に出回っている成功哲学書にいかに嘘が多いかを、著者の鈴木氏が明らかにしている。
「鈴木さん、僕はちょっと疲れてるんです。なぜなら、あの本に書いていることはほとんど嘘だから。
 本を出す前から僕は名前が知られるようになり、講演などで“成功の秘密”を話すように望まれるようになって、“ウケる”話をするようになった。人々は美談を求めていて、僕はそれに応えるように、“努力は報われる”“夢を見続ければ叶う”という話をするようになったんだ。
 そんな話をし続けているうちに、自分もそれが事実だと思うようになり、嘘を本当のように話してきたんだ。それがあの本になった。
 鈴木さん、本当のことを言うけど、僕が成功したのは偶然なんだよ。たまたまやっていたことが当たっただけで、自分でも訳がわからないうちにこうなったんだよ。
 単なる偶然です、と言ったら人々は納得しない。だからこれまで読んできた本に書いてある話を適当に組み合わせただけなんだよ」
そりゃそうだろうと思う。努力した人、苦労した人は世の中にたくさんいるけれども、同じような努力をしても成功する人もいれば失敗する人もいる。そこには"運"という、摩訶不思議なものが介在することは間違いないのだ。理屈のないところに理屈をつけようとするから、無理が生じる。無理が通れば道理が引っ込むのは世の習いで、やがて真実は隠され、美談だけがまかりとおるようになるのだ。


そして、同じようなことは自己啓発と呼ばれている分野では、もっと顕著となる。
(明日に続く)

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