2013年5月11日土曜日

権力のジレンマ

日本では、民主党が政権をとったのはいいものの、何もいいところを見せずに政権を移譲してしまいまして、今では青息吐息の状態です。

同じようなことが、ミャンマーの民主化の旗手であるアウン・サン・スー・チー女史の身に起こるかもしれません。

報道によれば、先月20日に起こった仏教徒とイスラム教徒の衝突が激化して、ミャンマー全土で仏教徒とイスラム教徒の対立抗争が起こっているのだそうです。殺人、レイプ、強盗などが多発して混乱が生じているという報道もあります。

これまでミャンマーの人々は、軍の圧政の被害者という立場でした。アウン・サン・スー・チーはその代弁者です。ところが、イスラム教徒との対立においては、仏教徒は90%の圧倒的多数者です。もしもアウン・サン・スー・チーが人権派としての立場からイスラム教徒を擁護すれば、彼女の支持者たちは彼女を見限るでしょう。

弱者が権力を握った時に、うまく政権を運営することは難しいものです。権力を奪取した旧敵への対応をいかにすべきか、腐敗した政治をどう建てなおすべきか、国際関係をどう修復していくか、といった諸問題に加えて、新しく現れるのが、新与党に属していない、別の弱者をいかに処遇すべきかという問題です。

仏教徒とイスラム教徒の対立が抑えられてきたのは、多分軍政のおかげでもあるのでしょう。軍政という共通の敵がある間は、お互いの対立が表面化することはありませんでした。ところが改革開放の波と、急速な民主化によって、軍政の圧力が緩みました。軍政下で同じような事が起きた場合、軍は双方の言い分も効かずに軍事力で鎮圧してきたでしょうが、もうその手法は使えません。

日本でも、民主党が政権を取った時に、それまで半権力側であった護憲派などの喝采を浴びたものですが、別の弱者である沖縄の人々を説得できなかった上に、福島原発事故後の被災者という、新たに現れた弱者を救うことが出来なかったために、彼らの命運が尽きました。

強圧的な人間が多少の圧政を行なっても人々は許容しますが、弱者を代表する者が権力を振りかざすことを許容する人はいません。

ビスマルクのような強面の政治家が権力を握った時、大きく社会が改善され、発展に向かってきたのは歴史の示すところ。アウンサンスーチーが権力者となって、果たしてミャンマー社会は発展へと向かうのかどうか。

私は難しいと思います。少数派であるロヒンギャ人を擁護できなかった彼女に、これ以上期待することはできないでしょう。

たとえば、南アフリカで政権をとったマンデラ氏は、白人との和解を呼びかけ、黒人に対して不利な法律であっても、それが国家のためになるならば積極的に取り入れて行きました。旧敵を認め、旧敵と和解しようとするならば、敵の取ってきた手法を取り入れることは、
「旧敵と和解するため」
という言い訳ができますが、彼女はどうも、万年野党のようなタイプで、終始一貫、軍政批判のみを続け、軍政がこれまでミャンマーで果たしてきた役割を肯定することはありませんでした。

今年初め、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは2013年版の年次報告で、アウンサンスーチーは少数民族の人権保護に消極的で、失望していると批判しました。国際社会の圧力で政権についた彼女に、今度は国際社会が様々な要求をつきつけていきます。

権力のジレンマ。自宅に軟禁されていた時以上の苦悩を、彼女は今味わっているでしょう。

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