2013年5月10日金曜日

村上ファンドを支える女

村上世彰(よしあき)という人物が、10年ほど前に、仕手株取引で名を馳せたのを覚えている方も多いでしょう。

元通産省OBでありながら株式ファンドを立ち上げ、集めた大量の資金を武器に数々の優良企業の株式を取得した後、所有者となった権利を利用して、経営者に、
「企業にある資金を事業に使わずに銀行に預けておくくらいならば、株主に還元しろ」
と迫って無理やり金を引き出す、という手法で悪どく稼ぎました。最後はインサイダー取引が発覚して逮捕されます。

村上氏の父親は元台湾人だったそうです。『週刊文春』2006年6月15日号に、
(村上世彰は)主に中華民国(台湾)との貿易を営んでいた華僑貿易商である在日台湾人の村上勇の次男として大阪・道頓堀界隈に生まれる。台湾生まれの父は「華僑とインド人のハーフ」といわれる。
と書かれているそうです。親が金持ち、ハーフの元官僚とくれば、少女漫画だと高スペックの主人公になりそうですが、全然そうは見えません(笑)。
ただ、よく見れば美青年と言えないこともない。髪型を変え、身体を鍛え、もっと落ち着いて喋れば女性ファンも増えると思うのです。そういうイメージ戦略を、どなたか考えればよかったのにと、彼のスペックを知った後に思いました。

外国人の血を引いているからでしょうか、日本人が世間に遠慮するようなことでも情け容赦ない発言を繰り返しました。その様が、私には醜悪に見えましたが、世間のある層の喝采を浴びました。

彼の中に、世の中のために何かをしよう、という意思を感じられなかったために、まったく共感できませんでした。しかし、あの態度はもしかして、他人と異質であるがために、日常的に感じざるを得なかったルサンチマンが、源泉だったのかもしれません。それが当時分かっていれば、彼にもう少し、共感できたはずです。

ハーフで金持ち、官僚を辞めてファンドを設立、日本社会へのルサンチマンを秘めながら、それを見事に隠して株式市場へ打って出る……これで彼が喋り方を工夫してくれていれば、もっと良かったのに。ホリエモンといい村上氏といい、どちらも素材がいいのに残念です。一方はブクブクと太り続け、一方は笑い人形のように振舞っていたのですから。

その彼が、投資活動を再始動したのだそうです。
★ 新生・村上ファンド その野望と内情――この先、村上氏はどう出るのか?
 あの「村上ファンド」が株式市場に舞い戻ってきた。
 1月中旬、不成立に終わったPGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフに対する敵対的TOB(株式公開買い付け)。その最終盤で突如、大株主に躍り出た金融会社「レノ」こそが新生・村上ファンドの中核会社だ。150億円超を一気に投じて約2割の株式を握り、買い占め先に書簡を送りつけて自社株買いを迫る──。そのやり口は全盛期を彷彿とさせるものだった。
村上氏は前回の失敗に懲りたのか、今回は表に出ずに、シンガポールから市場操作の指揮だけを取るようです。それを支える社員の中に、とある名前を発見して、おっと思いました。
 かつて盟友関係にあった野村証券OBの丸木強氏ら主要幹部は村上氏の元を去っていた。新たなパートナーとなったのは、村上ファンドで企画課長だった三浦恵美氏(37)、親しい税理士の赤根豊氏(43)、顧問弁護士的存在の中島章智氏(52)の3人だった。
三浦恵美……。今から3年ほど前の「AERA」の記事で、彼女の名前があったように思うのです。元村上ファンドの社員が村上氏を逮捕した日本政府への復讐に燃えて、孤軍奮闘している、といった内容でした。

株式市場は一種の戦場。そこで負傷した傲慢な指揮官をかばいつつ、復讐に燃える若き女性。現代の物語でありながら、日本史上のある一コマを連想させます。
それは、京都で乱暴狼藉を働いたために民衆から嫌われ、最後には京を追われた木曾義仲に、最後までつきしたがった巴御前です。

「すごい女性がいるものだ」
と思い、覚えた彼女の名前が、確か三浦恵美だったような……。

「AERA 三浦恵美」でググったところ、すぐにヒット。そして、私の予想がドンピシャだったことを知ります。
★ <記事紹介>「村上ファンド『復活』と美女」(『AERA』09年12月7日号)
『AERA』に掲載された「村上ファンド『復活』と美女」なるタイトル記事(3頁)が、一部の事情通投資家の間で話題になっている。「村上ファンド」を率いていた村上世彰被告はニッポン放送株のインサイダー容疑で逮捕され、未だ被告人の身(中略)だが、「レノ」なる会社の役員などを務める三浦恵美なる女性を通じて「復活」しているというもの。ただし、投資先は株から、不動産にシフトしているという。(なお、同記事では三浦氏も村上氏も互いの関わりを否定している)
そうそう。三浦氏は村上への忠誠と、金融当局への復讐を公言しながら、「レノ」と村上氏との関係を、当初は否定していたのです。
2006年6月のインサイダー事件前後に村上氏は居住地をシンガポールに移したが、毎月のように帰国しては指示を飛ばしているとされる。移住計画とともに村上氏が国内でひそかに進めたのは不動産投資への転換だった。その窓口に仕立て上げるべく、知り合いのつてで入手したのが休眠状態にあったレノだ。
08年10月、村上氏はレノを共同経営体制にするため「覚書」を交わしている。
ところが、やっぱり村上氏が、「レノ」の経営に参画していました。時来りて、隠す必要が無くなったのでしょうか。三浦氏は村上氏を裏切らず、徒手空拳で戦ってきたのですね。村上氏との絆は強かったのでしょう。村上のどこにそんな魅力があるのやら。頭はたぶん、抜群にいいのでしょうが……。

三浦恵美という女性に、これから注目していくと、面白い人間ドラマを観ることができるでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿