2012年9月26日水曜日

副編集長の名物コラム 「TA-NEHISI COATES」 ②

TA-NEHISI COATES--The Atlantic Voices」の中の「We Are All Welfare Queens Now」の記事の冒頭は、こう始まります。
アメリカ人の2人に1人は、自分がもっと楽になれるように、オバマに投票するだろう、というミット・ロムニーの高飛車な主張のことをいろいろと考える内に、私はあの有名な、リー·アトウォーターのアメリカ南部選挙戦攻略についての主張を思い出した。
リー・アトウォーターとは、元ブルース・ギタリストから政治の世界に進んだ人物です。
1988年、「最も汚い選挙」と言われた大統領選で、共和党の選挙対策本部事務局長として大活躍しました。
民主党の大統領候補だったデュカキスが、州知事時代に黒人犯罪者の一時帰宅を認めたところ、その犯罪者が再犯を犯す、という事件がありました。
そのことを取り上げて、「デュカキスは犯罪に弱腰だ」と激しく非難して彼の支持率を大幅に下げることに成功したという、まあ、いわくつきの人物です。
「1954年には、「ニガー(黒人の蔑称)、ニガー、ニガー」と言ってまわれるけれども、1968年には「ニガー」という言葉を使えない。
それはあなたにとって損となるだけ。
逆効果だ。
だから、強制バス通学(黒人と白人の児童は一緒にバス通学しなければならないという運動)、州の権利(合衆国は州の白人保護の権利を侵害するべきではないという考え)など、そういった言葉を使う。
減税について話すことは、現在、とてもいい婉曲表現になる。
あなたが減税のことを話すのは完全に経済的なことなのに、付随して、黒人が白人よりも傷つくことになる。
無意識がその発言の中に、黒人蔑視を含んでいることを感じ取るのだろうね。
私は黒人差別発言はしない。
でも、抽象的、隠喩的になり、人種的な問題をどこかへやってしまえば、それを言えるんだ。
そうだろう?――だって明らかに「私たちは税金を減らしたい」みたいなことを言うのは、強制バス通学のような言葉よりも婉曲的だし、「ニガー、ニガー」なんて言うよりも、もっともっと婉曲的だからね」
(You start out in 1954 by saying, "Nigger, nigger, nigger." By 1968 you can't say "nigger" -- that hurts you. Backfires. So you say stuff like forced busing, states' rights and all that stuff. You're getting so abstract now [that] you're talking about cutting taxes, and all these things you're talking about are totally economic things and a byproduct of them is [that] blacks get hurt worse than whites. And subconsciously maybe that is part of it. I'm not saying that. But I'm saying that if it is getting that abstract, and that coded, that we are doing away with the racial problem one way or the other. You follow me -- because obviously sitting around saying, "We want to cut this," is much more abstract than even the busing thing, and a hell of a lot more abstract than "Nigger, nigger.")
共和党の支持基盤には、南部の人種差別を色濃く残した白人たちが大勢います。
彼らを取り込むためにどうすればいいのか、アトウォーターは、上記の言葉で説明しました。
さて、それに対してブログ主のコーテスは、こう指摘します。
アトウォーターが思い描いた戦法とは、議会が市民権付与を白人だけに制限した1790年(このブログで同じことを繰り替えしていたらごめんなさい)の時代へ、時計の針を戻すことだった。進歩とはまず第一に、公民権(投票、公職勤務、軍隊従軍、裁判従事などなど)のために、議会と直接的、あるいは間接的に戦ってきた一連の流れを意味してきたのであり、これらの権利を縮小をさせようとする抑圧的な戦術のことではなかった。
ブログ主のタネヒシ・コーテスが黒人だから、もちろん黒人蔑視には否定的でしょう。
彼はロムニーの低所得者蔑視の発言の中に、黒人蔑視に通じるものを見出したようです。

なお、1790年云々とは、この年に議会が制定した「帰化法」のことを指しているのでしょう
アメリカの市民権を取得できるのは、アメリカに2年間滞在した「白人」だけに制限した規定です。

(明日も続きます)

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