2012年9月5日水曜日

最低限のモラル

モラル、道徳というものは時代によって変遷していきます。年配の方は、昔と現代との価値観の違いを痛感することが多いでしょう。

たとえば、大勢の人が話し合う場所で、休憩以外で飲み物を飲むことはいけないことでした。数十年前には、会議中、あるいは授業を受けている途中で、個人で買った缶ジュースなどを飲むことは、許されない行為です。

それがいつの頃か、飲み物を飲んでいても、咎められることはなくなりました。

これは、ペットボトル容器が巷間に出回った影響によるものでしょう。蓋がついているから、こぼれないし、落としても大きな音がしません。安定性があるので滅多なことでは倒れない……缶ジュースに比べれば、その場の雰囲気を妨害しない容器が完成し、モラルが変容しました。

このように、モラルは時代によって、大きく変化します。ペットボトルのような技術の進化が影響することもあれば、力の弱い文明が力の強い文明に触れて、大きくその価値観を変える場合もあります。

しかし、価値観が変わっても「価値観を守らなければならない」という点は、いつの時代も変わりません。モラルの中身は変わっても、モラルを守ること自体は、人類普遍の原則です。

ただ、モラルを守ることは、簡単なようで難しいものです。あれもダメ、これもダメ、では、何をするにも不自由です。自由でいながら信頼を得るためには、最低限のモラルは守る必要があります。

幕末、長州(現・山口県)の指導者の一人として活躍した高杉晋作という人物がいます。これがめちゃくちゃな人間で、かなりでたらめなことをおこないました。御殿山(現・東京都品川区)に建設中のイギリス公使館を焼き討ちにしたり、藩から預かった公金をもって愛人と逃避行を行ったり……大酒飲みで女好き、派手なことが大好きな彼の行動は、大勢からひんしゅくを買ったといいます。

彼は優秀でしたが、優秀であっても人から嫌われて、落ちぶれる例は数多くあります。しかし、彼は最低限のモラルを守っていたために、最後まで藩内の信用を失うことはありませんでした。

そのモラルとは、親孝行と主君に忠実であることです。デタラメなことをやりつつも、常に親を気にかけ、親の勧める縁談は断らず、国事以外の親の勧めに逆らうことはありませんでした。それに加えて、君主への忠義もまた、なみなみならぬものがありました。そこが、大勢の人から信用を受ける理由だったのです。

どのようなデタラメを行なっていても、最低限のモラルを絶対に守る人間は、周囲の信用を受けます。そもそもモラルは守りにくいもの。それを守ると周囲に伝え、どのような苦境に陥ろうとも、そのモラルだけは決して譲らない……という人間は、逆に信頼を勝ちえます。

ただ、最低限のモラルは、時代とともに変容していきます。今では、親孝行よりも、夫婦間の愛情が厳しく問われる時代になりました。結婚後に、他の異性と肉体関係を持つことは、今では大変嫌われる行為。もしも高杉晋作が現代の政治家だったとしたら、逆にモラル面を糾弾されて、大きな活躍ができなかったかもしれません。

考えれば、それはいいことなのかもしれません。親に虐待を受けていた人間にも親孝行を求めること、あるいは、独裁国家であっても元首に忠誠を誓って悪に手を染めることを求められることよりも、自分が選んだ愛する人を、少なくとも結婚している間は裏切らないことを求める近年の道徳の方が、実行しやすいはずですから。

いや、逆に性欲の衝動を抑えることの方が困難だ、という意見もあるでしょう。性欲は人間の三大欲求の一つです。

どちらにしても、モラルは守りにくいからこそ守ることに価値があります。何か一つあるモラルを定め、それだけは何があろうとも守るという人間は、それ以外のことで多少羽目を外しても許されるというのなら、最低限のモラルを守ることは、逆に自由の翼を手に入れることなのでしょう。


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★ 32年の追跡調査でわかった「幸福な人生の秘訣」
幸福な人生の秘訣は、若年期に社会とつながっていることだとか。今、私は大変幸せなのは、幸せな人間関係のせいですね。「人間」という言葉が「人の間」という意味であるとおり、人は人との関わりの中で、はじめて幸福を感じるのは当然。それが調査によって、統計的に証明されたという記事です。


★ 不純物なし「全透明氷」のつくり方
お店でよく出てくる透明な氷。これを家で作るのは一手間かかるものですが、業者にはそれぞれ、ノウハウがある模様です。


★ 格差社会アメリカの起源 「中流の失われた10年」
そもそも「アメリカンドリーム」とは、大豪邸にだれでも住めることではなく、この国に行けば、誰もが幸福に生活できる、というささやかな夢でした。それがいつの間にやら、大金持ちがさらに富を追求することを是とするための言葉に成り下がってしまいました。


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