2012年8月14日火曜日

人体実験のアルバイト あるいは治験体験談 ④


(昨日の続きです)
今日から本格的な治験の開始だと、うきうきしながら朝9時に集合した私。
入所すると、初回の治験よりも参加者が5名ほど少なくなっていました。

多分、何かにひっかかったのでしょう。

この日は面白いことがありました。試験の前に、
「簡単な心理テストを行いたいので、少し時間をください」
と言われ、少人数ごとに別室に案内されて、心理テストを受けさせられたのです。

ここで私は断固拒否しました。
「申し訳ないけれども、その意味がわからない。今回の試験の目的は糖尿病の薬の治験だと聞いている。心理テストがなぜ必要なのか、必要ならば理由を教えて欲しい。理由がないならやらない。不必要な検査をするのはなにか裏がある、ということか。それなら帰らせて欲しい」
と、抗議したのです。

「直接は関係ありません。ただ、精神科からも、ついでに調査をいくつか頼まれているだけなので……」
と言葉を濁す医師。理由がわかりません。

私の言葉に感化されたのが、数名が心理テストを拒否。残りの25、6名は、
「別にいいだろ。ここまで来て何をカッコつけているんだ?」
という態度で別室へと消えて行きました。

さて、それから治験です。

総勢30名ほどの男性が、言われたとおりにベッドに寝て、看護師によって糖尿病の試験薬を駐車され、それからしばらくして採血用の針を打たれ、何も話さずベッドで寝ている姿は、異様でしたが、それにも慣れました。


この日も朝から晩までマンガを読み倒しました。

一日中ベッドで寝るために、身体がなまるのが玉に傷ですが、それ以外は寝ててもいいし、ぼんやりとしていてもいいのですから、パラダイスじゃないか、という感想は前回と同じです。

今回は弁当も豪華でした。前回はホカ弁でしたが、今回はデパート地下で売っているような、豪勢な幕の内です。

なお、この日は別の指示もありました。尾籠な話で恐縮ですが、
「オナニー厳禁」
です。

こんな衆人監視の中でオナニーする猛者はいないだろうと思いましたが、夜になれば消灯しますし、夜布団の中では、何をしていてもわかりませんからね。

こういう指示も必要だったのでしょう。

何も記すことはなく、二時間に一度の採血に耐え、そして消灯です。

消灯後も、枕元の明かりは点けてもよかったので、私は夜中の1時過ぎまで起きてマンガを読んでました。何しろ日中ずっと寝ていたので、全く眠気を感じなかったからです。

ところが他の参加者からクレームが入ったために、消灯せざるを得ませんでした。

翌日も同じような光景が繰り広げられ、16時頃に開放されました。約1日半、施設に閉じ込められていたことになります。

不思議だったのは、30人もの同世代の人間がいたのに、必要最低限の意志疎通以外は、誰一人余計な口を聞こうとせず、会話が全くと言っていいほどなかったこと。

この時の自分の心境は不思議です。なんというか、自分が矮小なモルモットの一匹となったような、妙な居心地の悪さを感じ、この中で友人を作ることを無意識に拒否していたのです。不思議な感覚でした。

翌週も参加して、特に異常もなく治験は無事終了。15万円は無事口座に振り込まれました。
……というのが、私の治験体験です。


さて、ここまでは、ごくごく一般的な治験の体験談です。この手の話は、ネットにいくつも転がっていることと思います。これから、それほど聞いたことのない話を書いていきましょう。

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