2012年5月12日土曜日

魚住昭の『渡邉恒雄 メディアと権力』が面白い

渡邉恒雄の半生を描いた『渡邊恒雄 メディアと権力 (講談社文庫)』という作品をそれほど期待せずに読み始めたところ、抜群に面白かったです。


明治や戦後の会社の創業者などの伝記には、血沸き肉踊るような体験談が多いため、とても興味を惹かれます。ところが2代目、3代目ともなると、初代ほどのアクはありません。

常識人が多くなり、企業の創業者にあるような、留学しようとしたら奴隷に売られた、というような破天荒なドラマは少なくなります。

「2代目社長は、辣腕家であった。1985年、高品質を求めるトヨタに自動車の部品納品に成功! ○○地方の部品工場としては初の快挙だった! 鳥肌が立つほどの感動が、会社全体をおし包んだ」
と煽り文体で書かれても、申し訳ありませんが、業界外の人間にとってはそれがスゴイことだという実感は湧きません。友人をアメリカ軍に殺されアメリカに復讐するために科学技術立国を目指した、というような破天荒なドラマを創業者以外に期待してはいけません。

だから、渡邉恒雄氏の伝記に期待していませんでした。いかに個性的なキャラクターとはいえ、東大卒のエリートです。社長になるまでのエピソードに劇的なものなど、ないはず。サラリーマンとして上司にゴマをすりつつ、中間管理職として部下をまとめあげ、大きな業績をいくつも着実に上げ、何十年もかけて組織の頂点に上り詰めていく経歴を読んでいても面白くないだろう、と予想していました。

それなのに本書を手にとったのは、雑誌か何かで「彼はヘーゲルやカントを信奉していて、迷うことがあれば『実践理性批判』などを紐解いて行動の指針としている」ということが書かれていたからです。

私は、経営学のような具体的なHow to本ではなく、抽象的な哲学書を基に思想を練り上げ、現実に応用できる人間が好きです。だからナベツネの考え方、思想の軸を知りたいと思って、その半生記を読み始めたのであって、ドラマには期待していませんでした。

ところが、権力を勝ち取るまで彼がとってきた手法の数々を知ることは、ページをめくる指が遅くてもどかしくなるほど面白いものでした。

最初に感心したのが、東大入学してすぐのエピソード。ナベツネは東大入学後、共産党に入党するも、党の方針にすぐに疑念を抱きました。全国一斉のゼネストで、変電所を爆発させ、全国への電力供給をストップすることを求められ、組織の目的のために個々人の道徳を抑えつけなければならないことに怒りを感じます。

「党の規律よりも、個人の道徳などの主体性が優先されるべきじゃないか」

若いころの渡邉は、今のナベツネとは真逆の理想を主張して、共産党を変えようとしましたが、賛同を得られずに共産党から追放されたそうです。

転向したとはいえ、企業からは嫌われる元共産党員。その経歴がたたり、まともな仕事にはつけず、当時は一流とはみなされない、読売新聞という関東のローカル紙に入社したのだそうです。

そこで彼は、負け組から脱却するために、政治部記者として、連日スクープをねらいます。大物政治家に食い込み、信用を勝ちとりスクープを連発しながら、この政治家の個人秘書として政治に深く介入。日韓関係正常化に尽力するなど、政治のキーパーソンとして活躍。その過程で読売新聞社の社長から信頼を勝ち取ります。

しかし当時の主流派の読売新聞の社会部からは目の敵にされ、ワシントン支局長へ異動となり、その間に社内の渡邉派が次々に主流から外される、という再度の挫折も味わいますが、なんとかカムバック。カムバック後、今度は社内の反渡邉派を次々に粛清。紆余曲折を経て、読売新聞社のトップの座を射止めることに成功するのです。この過程がドラマのようで面白いのです。

戦後の政治や歴史に多少興味のある方なら、自分たちの知っている歴史の影で、渡邉人脈がどのように関与してきたのかを知って慄然とすることでしょう。

しばらく、ナベツネ関連の記事を続けて書こうと思います。




本日気になった記事はこちら。↓


★ すぐにできる!必ず覚えておきたAndroidスマホの安全対策
スマホのセキュリティーについての問題点が指摘されています。
日本のフューチャーフォンは、ガラケーなどと揶揄されますけれども、安全性に関してはスマホよりもしっかりしています。

AndroidにしてもiPhoneにしても、使用者の個人情報を利用して、マーケティングに活用しようと躍起になるあまり、消費者保護を疎かにする傾向に向かっているように思えてなりません。特にGoogleの最近の活動を見ていると、本当に個人情報を守ろうという意思があるのかどうか、時折疑問に感じます。


★ MacAppStoreに承認されなかったアプリの巣窟「The HackStore」がオープン!
もしかすると個人情報がぶっこ抜かれるかもしれないアプリの紹介。

アップルはアプリの審査が厳しいことで定評があります。アダルト系のアプリ、携帯に異常を生じさせるようなアプリ、情報保護の観点から問題がありそうなアプリは排除されてしまうのですが、このストアでは、アップルにはじかれた問題アプリがたくさん扱われているとのこと。

ちなみに先日話題になったスマートフォンがホッカイロになるという魔法のアプリ「ホカホンHD」をこのサイトで探しましたが見つかりませんでした。スマホを振ると、CPUに高負荷をかけて熱を無理やり発生させるという問題アプリですが、アップルへの申請は却下されたとのこと。いずれこのサイトで扱われるのかも。


★ 映画に出てきそうなフロントガラス前方にナビ情報を表示する世界初のカーナビをパイオニアが7月下旬から発売へ
車のフロントガラスにナビ情報を投影するカーナビだそうです。うーん。運転する際の邪魔になるのではないか、という心配が先に立つ反面、常に前方に視線を向けていても、情報が手に入れられるこの表示方法の方が、運転しやすいのではないか、とも思います。「カーナビに気を取られていて事故にあった」という証言も最近多いため、どちらがよいのかは、今後の検証が待たれます。


★ キーボードでできる操作
これだけ知っていれば、パソコンの作業が、今よりも二倍に捗ります。


★ ディズニーの開発したタッチセンサーの新技術「Touché」がまさにイノベーション
スマートフォンの使いにくさは、あの小さなタッチパネルを指で動かすには限界があることが原因です。上記記事のショートカットを、スマートフォンで利用することが難しく、また2本指や3本指を利用するバリエーションも、さして豊富とはいえません。

その点、この技術を使えば、ダイナミックな体の動きをスマートフォンで感知して、システムを操作することが可能になります。

パチンと指を弾けば、目の前のホログラムが変化する、というSFの中の世界が現実化する日は近そうです。

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